
2026年2月20日
本日(2月20日)の東京株式市場では、三菱重工業・川崎重工業・IHIをはじめとする防衛関連銘柄が幅広く上昇しました。背景にあるのは米国とイランの核交渉を巡る急速な緊張の高まりです。ここ数日で状況が大きく変化しているため、事実を整理したうえで投資テーマとしての見方を考えます。
現状の整理:何が起きているのか
トランプ大統領の「10〜15日」期限発言
2月19日(現地時間)、トランプ米大統領はエアフォースワン機内で記者団に対し、イランとの核合意について「交渉継続を認めるのは大体10日から15日、それが上限だ」と述べ、合意に至らない場合は「彼らにとって不幸な結果になる」と警告しました(Bloomberg、AFP報道)。
同日、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「トランプ氏が規模を限定したイランへの軍事攻撃を検討しており、承認されれば数日以内に実行される可能性がある」と関係者情報として報じました(日本経済新聞、2月20日転電)。
米軍の中東増強:2003年のイラク侵攻以来の規模
米軍はすでに中東に空母打撃群2隻・多数の戦闘機・給油タンカーなど大規模な戦力を展開しています。ロイターは米当局者2名の話として、「攻撃が命じられた場合、数週間にわたる持続的な作戦となる可能性がある」と伝えており、過去の限定的な交戦とは規模が異なる構えです。
イラン側の対応
一方のイランは2月16日にペルシャ湾の要衝・ホルムズ海峡で軍事演習を開始。攻撃を受けた場合には米軍の基地や施設を「正当な標的」とする全面報復の姿勢を崩していません。ただし2月17日にはジュネーブでの協議を実施しており、外交と軍事圧力が並走する「二重構造」の状況です。
予測市場の見方
米国の予測市場「ポリマーケット」では、3月15日までに米国がイランへ軍事行動をとる確率が2月19日時点で55%、6月30日までは67%に達しています(Benzinga Japan報道)。ただし予測市場は市場参加者の期待値であり、実際の政策決定を意味するものではありません。
市場への影響①:防衛関連株の動き
日本株:大型3社+中小型株が一斉高
本日(2月20日)の東京市場では、「防衛銘柄御三家」である三菱重工業(7011)・川崎重工業(7012)・IHI(7013)がいずれも上昇。さらに東京計器・日本アビオニクス・細谷火工・豊和工業・石川製作所・興研・重松製作所といった中小型の防衛関連銘柄も軒並み上値を追う展開となりました(みんかぶ報道)。
三菱重工は今年1月にも、米トランプ政権がベネズエラへ軍事行動に踏み切ったとの報道を受けて前日比9.08%高の4,189円まで急騰した経緯があり、地政学リスクに対する感応度の高さが改めて示されています(日経電子版、1月5日)。
なお、三菱重工の防衛・宇宙事業の受注額は直近2期で年1兆8,000億円台に急増しており、今期(2026年3月期)も1兆2,000億円規模が計画されています。株価は既に相当程度織り込まれている面があり、PERは60倍超、PBRも約4倍という水準です(かぶリッジ参照)。
米国株:防衛ETFが2〜3%上昇
米国市場でも2月19日(水)に航空宇宙・防衛セクターが動きました。SPDR S&P航空宇宙・防衛ETF(XAR)が約2%上昇、Global X Defense Tech ETF(SHLD)は約2.7%上昇し、市場平均を上回りました。個別では、ミサイルシステムに強いRTX(レイセオン・テクノロジーズ)、最大の軍用機メーカー・ロッキード・マーチン(LMT)、無人機・ステルス機のノースロップ・グラマン(NOC)が関連銘柄として注目されています(Benzinga Japan報道、SBI証券レポート)。
市場への影響②:原油価格の急騰
エネルギー市場への影響も無視できません。WTI原油先物は2月18〜19日にかけて一時1バレル66ドル台まで上昇し、2025年8月以来の高値圏に達しました。週間の上昇率は5%超となっています(日経電子版、TradingEconomics)。
価格上昇の主な根拠はホルムズ海峡の通過リスクです。同海峡は世界の石油海上輸送の約27%(日量2,090万バレル)が通過する要衝ですが、既存パイプラインで代替できるのは約260万バレル/日に過ぎず、部分的な混乱でも価格に大きな影響が出ます(野村證券リポート、EBC Financial Group)。
ただし、2月17〜18日のジュネーブ協議で「一定の進展」との報道が出た局面では、WTIは一時62ドル台まで下落しました。外交進展の観測が出るたびに価格が反落するパターンが繰り返されており、現時点では強気・弱気の材料が混在しています。
投資テーマとして見るための論点
構造的な背景:日本の防衛費増額は長期テーマ
今回の中東緊張は短期的な刺激材料ですが、日本国内の防衛関連には中長期の構造的な追い風もあります。日本政府は安全保障関連3文書の改定に基づき、2027年度をめどにGDP比2%水準への防衛費増額を進めています。三菱重工・IHI・川崎重工の受注急増はこの流れを反映したものです。高市政権もこの方向性を引き継いでいます。
エネルギー関連銘柄にも波及
原油高の恩恵を受けやすいのは、資源・エネルギーセクターです。INPEX(1605)など日本の資源開発会社や、精製・元売り大手の出光興産・ENEOSなどが連動する場面が過去にも見られました。ただし、日本は原油の輸入国でもあるため、原油高は企業コストや交易条件の悪化を通じて経済全体にはネガティブな面もあります。
冷静に見ておくべきリスクと注意点
① 「ブラフ」である可能性は排除できない
トランプ大統領は外交交渉において強硬姿勢を「ディール戦術」として使うことで知られています。2月19日の交渉でも「good progress」との評価がイラン側から出ており、実際の軍事行動に至らず外交的着地となる可能性も相応にあります。防衛株は「有事の期待で上がり、平和の報道で下がる」パターンを繰り返してきた経緯があります。
② 日本株の防衛関連はバリュエーションが既に高い
三菱重工のPER60倍超・PBR約4倍という水準は、防衛費増額という実需を加味しても相当な期待を織り込んでいます。急騰後に材料出尽くしとなった際の調整リスクは念頭に置く必要があります。
③ 実際の紛争勃発は市場全体にはマイナス
過去の事例(湾岸戦争、イラク侵攻など)を振り返ると、米国自身が戦闘に参加した局面では株式市場全体が一時的にネガティブな反応を示すことが多い傾向があります。防衛株の上昇は「地政学リスクの高まりへの期待」であり、有事が現実になれば全体相場の下落にさらされるリスクもあります(SBI証券レポート参照)。
④ 原油高は日本経済全体にはマイナス要因
WTIが持続的に上昇する局面では、日本の製造業・運輸・航空など幅広い業種のコストを押し上げます。資源輸入国としての日本株全体には逆風となり得る点も認識しておく必要があります。
まとめ
米・イランの緊張は2月20日現在で「10〜15日」という具体的な期限が設定され、市場が無視できない段階に入っています。防衛関連株・原油価格の動きはその反映です。ただし、トランプ政権の外交スタイルは圧力と交渉を同時に進める手法であり、「交渉妥結→リスク後退→株価反落」というシナリオも十分ありえます。
防衛テーマを中長期で見るならば、日本の防衛費増額という構造的な裏付けがある点は本物です。しかし短期的な地政学ニュースへの飛びつき買いは、ニュースの振れ幅が大きい分、損益のぶれも大きくなります。ポジションの大きさをコントロールしながら、情報の精度と自身のリスク許容度を照らし合わせて判断することが、このテーマに向き合う基本姿勢です。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。投資はご自身の判断と責任のもとで行ってください。
<関連する記事>
- 📄 イランに合意迫るトランプ氏、期限「最大15日」-中東に空母2隻配備 ─ Bloomberg(2026年2月19日)
- 📄 トランプ氏、イランへ「限定的な初期攻撃」を検討か 米紙報道 ─ 日本経済新聞(2026年2月20日)
- 📄 トランプ氏、イラン攻撃「10日か15日以内」 イラク侵攻以来の軍集結 ─ 日本経済新聞(2026年2月20日)
- 📄 トランプ氏、イランに15日以内の合意迫る イランは報復攻撃の構え ─ AFPBB(2026年2月20日)
- 📄 トランプのイラン攻撃へ秒読み?──6つの兆候 ─ Newsweek日本版(2026年2月19日)
- 📄 米軍は数週間の対イラン作戦に備えている ─ ロイター/Newsweek日本版(2026年2月)
- 📄 防衛関連株が一斉蜂起、トランプ発言でイランへの大規模軍事攻撃への思惑高まる ─ みんかぶ(2026年2月20日)
- 📄 米国とイランの紛争リスクが高まる中、7社の防衛関連株が急騰 ─ Benzinga Japan(2026年2月)
- 📄 原油・ガス供給、停滞リスク 市場、ホルムズ海峡を注視 ─ 日本経済新聞(2026年2月20日)
- 📄 三菱重工など防衛関連株が上昇 地政学リスクの高まり意識 ─ 日本経済新聞(2026年1月5日)





















![【ネスレ】最大78%値上げ…「キットカット」やコーヒーなど130品目以上2025年2月から値上げへ コーヒー豆やカカオ豆の高騰などが要因 [香味焙煎★]](https://invest-news-source.com/wp-content/uploads/wordpress-popular-posts/2140-first_image-75x75.png)



