
2026年2月20日
米国時間2月25日の引け後(日本時間2月26日早朝)、エヌビディア(NVDA)が2026会計年度第4四半期(2025年11月〜2026年1月期)の決算を発表します。日本証券新聞が「当面の最大の焦点」と位置付けるほど、今回の決算は国内の半導体関連株にも大きな影響を与える可能性があります。本記事では事実を整理しながら、この決算を投資家としてどう見るべきかを考えます。
1.今回の決算で市場が注目するポイント
事前のコンセンサス予想
ブルームバーグがまとめた市場コンセンサス予想(2月17日時点)は以下のとおりです。
- 総収入:前年同期比67.2%増の657億6,800万ドル
- 調整後EPS:前年同期比70.8%増の1.52ドル
事前予想どおりなら、総収入の伸び率は2四半期連続で前四半期を上回り、EPSでは3四半期連続で成長が加速する計算になります。注目点は数字の達成だけでなく、次四半期(2〜4月期)ガイダンスの水準です。ブルームバーグでは2〜4月期の総収入を前年同期比62.4%増の715億5,700万ドルと見込んでおり、これを上回るガイダンスが出るかどうかが評価の分水嶺となりそうです。
前回(8〜10月期)決算のおさらい
参考として前回(2025年8〜10月期)の実績を確認しておきます。エヌビディアは2025年11月19日に発表した同四半期で、売上高570億600万ドル(前年同期比62%増)・純利益319億1,000万ドル(同65%増)を記録し、四半期ベースで過去最高を更新しました。いずれも市場予想を上回りましたが、次四半期ガイダンスが市場の一部期待に届かなかったとして、発表後の株価は高値から調整が続いていました。
株価の現状:割安感も出てきた水準
2月17日終値の184.97ドルは、2025年10月29日につけた最高値207.04ドルから約10.7%安の水準です。ブルームバーグによれば、2月5日の直近安値171.88ドル時点では予想PERが22.2倍まで低下し、2019年以来の低水準に達しました。足元の予想PERは23.8倍程度で、前回決算時の28.1倍と比べて割安感が出ています。アナリスト83人のうち77人が「買い」推奨、平均目標株価は257ドル程度(現状比約39%高)となっています。
2.エヌビディアの業績を支える構造的背景
ビッグテック各社の設備投資拡大
エヌビディアのGPU需要の最大の源泉は、大手ハイテク各社のAI設備投資です。Amazon・Microsoft・Alphabet・Metaの4社だけでも、2025年のAI関連設備投資は合計2,919億ドル規模に達し、2026年は最大6,800億ドルに達する可能性があるとも試算されています。フアンCEOは同社のクラウド用GPUが「完売状態」であると発言しており、足元の需要は旺盛です。
「ブラックウェル」世代の本格普及
前四半期から主力GPUが「ホッパー」世代から次世代の「ブラックウェル」へと切り替わり始めました。ブラックウェルは前世代比で大幅な性能向上を実現しており、データセンター向け収益をさらに押し上げる主役と期待されています。前四半期のデータセンター部門売上は約411億ドルで、今四半期はさらに伸びる見通しです(事前予想では約486億ドル)。
なお2026会計年度(2026年1月31日終了)の通期売上高は前年比63%増の約2,130億ドルが見通しとして示されており、アナリストは2027会計年度についても同48%増の約3,160億ドルを予想しています。
3.日本の半導体関連株への波及:3銘柄を整理する
① アドバンテスト(6857):最大の直接受益者
エヌビディア株への感応度が最も高い国内銘柄のひとつです。アドバンテストはエヌビディアのGPUを含む高性能半導体の検査装置(テスター)でシェアを持ち、AI向け半導体の増産に直接連動します。
最新業績(2026年3月期・第3四半期累計):売上高8,005億円(前年同期比46.3%増)、営業利益3,460億円(同110.8%増)と過去最高を更新。2026年1月28日の決算では通期営業利益見通しを3,740億円から4,540億円に引き上げ(3度目の上方修正)、翌29日に株価は前日比14.52%高の29,250円と上場来高値を更新、時価総額は20兆円の大台に乗せました。
2025年9月には時価総額が東京エレクトロンを約20年ぶりに逆転し、国内半導体関連株のトップに躍り出ています。ただし株価の割高感を示す指標はエヌビディアを大幅に上回る水準にあり、2月以降は一部利益確定売りで26,810円前後まで調整しています(2月12日時点)。
② 東京エレクトロン(8035):AI用途が下支えるも明暗分かれる構図
半導体製造装置最大手ですが、最新の四半期決算(2026年3月期・第3四半期)は売上高1兆7,317億円(前年同期比2.5%減)、営業利益4,192億円(同18.3%減)と減収減益でした。一方で、生成AI用途向け半導体の設備投資が伸長したとして通期予想を上方修正(年間配当も601円に増額)しており、AI向けと非AI向けで明暗が分かれている構図です。同社の株価は自社株買いや配当利回りによる下値サポートが意識されています。
③ KOKUSAI ELECTRIC(6525):「AI特需の本命」として急騰
バッチALD(原子層堆積)成膜装置に特化した半導体製造装置メーカーで、この分野で世界シェア約70%を誇ります。日経ヴェリタスが2月17日付で「AI特需の本命」と特集し、同社の株価は2024年末比で3倍弱に急伸しています。
最先端半導体の3次元化が進むほど、均一かつ大量処理が可能な同社装置の重要性は高まります。12月に米系大手証券が投資判断を引き上げたことが株価急騰のきっかけとなり、12月22日には前日比12%高でその日の値上がり率首位となりました。一方で、会社自身は足元の業績について慎重姿勢を維持(2026年3月期業績を一部案件ずれ込みで下方修正済み)。株価と会社見通しのギャップが大きく、期待が相当程度織り込まれている点は留意が必要です。
4.直近の攪乱要因:DeepSeekショックとカスタム半導体シフト
DeepSeekショック(2026年1月末)
2026年1月下旬、中国のAIスタートアップ「DeepSeek」が、エヌビディアの高性能GPUを大量使用せずとも競合する推論性能を実現できるモデルを公表したと報じられ、エヌビディア株が一時大幅下落しました。「GPUを大量に買い続けなくても良いのでは」という懸念が市場に広がったためです。ただし多くのアナリストは、AIの学習・推論需要が増大する中でGPU全体の需要は引き続き拡大するとの見方を維持しています。今回の決算会見でフアンCEOがDeepSeekや効率化技術の台頭に対してどう見解を述べるかが注目点の一つです。
カスタム半導体(ASIC)へのシフト
Google(TPU)・Amazon(Trainium)・Meta・Microsoftなど大手ハイテク各社が自社AIに最適化したカスタム半導体(ASIC)の開発・採用を進めています。汎用GPUよりもコスト効率が高い面があり、長期的にエヌビディアのシェアを一定程度侵食するリスク要因です。アドバンテストのCEOも2026年の市場ではASICへのシフトが見られたと言及しています。
5.冷静に見ておくべきリスクと注意点
① 「材料出尽くし」リスク
エヌビディアの決算は近年、発表直後に大きく動く傾向があります。前回(8〜10月期)は予想超えでも発表後の株価は上値が重く、3カ月以上にわたって調整が続きました。好決算・強気ガイダンスが出ても「すでに株価に織り込まれていた」として下落するシナリオは決して珍しくありません。
② 日本株固有の為替リスク
アドバンテストはドル円相場の影響を受けやすく、円高が進む局面では業績や株価の修正要因になります。同社は2026年3月期業績予想の前提として「想定以上の円安」を業績上振れ要因の一つとして挙げています。日銀の利上げ路線が継続するなか、為替の動向は引き続き注視が必要です。
③ 輸出規制・中国リスク
米商務省によるエヌビディアの最先端GPU(H20等)の対中輸出規制は継続されています。エヌビディアは中国顧客向けにH200の出荷再開を進めていますが、規制の強化・緩和が繰り返されるリスクがあり、業績の変動要因となり得ます。
④ 国内半導体関連株のバリュエーション
アドバンテストの予想PERはエヌビディアのそれを大幅に上回る水準にあり、「業績は強いが株価は期待先行」という評価が定着しています。KOKUSAI ELECTRICも2024年末比3倍近い急騰後であり、足元は業績に株価が追いつくのを待つ局面です。エヌビディア決算が予想を下回った場合、これらの銘柄には短期的な大幅調整が起こりえます。
まとめ
エヌビディアの2月25日決算は、2026年のAI投資サイクルが「ハイペースで継続するか・失速するか」を占う重要な試金石です。ビッグテックの設備投資拡大という構造的な需要は本物ですが、DeepSeekショックに代表される「効率化」の波や、カスタム半導体シフトという向かい風も現実です。
決算の数字そのものよりも、フアンCEOが次四半期以降のガイダンスをどの水準で示し、DeepSeekやASIC競合についてどう語るかが、今後の株価方向を決める最大の変数となりそうです。日本の半導体関連株(特にアドバンテスト)はエヌビディア決算との感応度が非常に高く、翌26日の東京市場での動きには要注意です。押し目買い・利益確定のどちらを選ぶにしても、決算発表前のポジション調整と、発表後の冷静な見極めが大切です。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。投資はご自身の判断と責任のもとで行ってください。
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