日銀1.25%でも円安が止まらない構造——9月18日、日米が同じ日に答えを出す
-1,259.61円
-1.93%TOPIX
-0.65%
下落率は日経の1/3.0ドル円
154.30円
協調介入前は164円日米政策金利差
2.38pt
2024年3月は5.33pt北海ブレント
109 ドル
8/3安値比 +32.3%
- 日銀は9月17〜18日の会合で政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げる方針。6月会合以来3カ月ぶりで、2024年3月以降の利上げ局面では最短の間隔になる
- 同じ9月18日にFOMCも結果を出す。7月会合は3.50〜3.75%で据え置きだったが、投票権を持つ12名のうち3名が利上げを支持した。据え置き前提で構えるのは危うい
- 日米の政策金利差は5.33pt→2.38ptへ55.4%縮小する見込み。それでもドル円は154.30円で、協調介入前の164円から10円戻した水準にとどまる
- 本日の日経平均-1.93%に対しTOPIXは-0.65%。下げ幅の77.7%は上位4銘柄が作った。指数の数字と、実際に売られた範囲は一致していない
1本日の急落は「全面安」ではなかった
9月11日の日経平均は1,259.61円安の64,011.34円で引けた。下落率-1.93%。取引開始直後に63,208.63円まで下押しし、一時は下げ幅が2,000円を超えた。東証プライムの値下がり銘柄は950を超え、全体の6割超を占めている。
ところが同じ日、TOPIXの下落率は-0.65%にとどまった。日経平均の下落率はTOPIXの2.97倍で、開きは1.28ポイント。値がさ株の構成比が高い日経平均と、時価総額加重のTOPIXとの差がここまで開くのは、「相場全体が売られた」のではなく「特定の重い銘柄が売られた」ことを意味する。
実際、指数寄与度の内訳を見ると答えははっきりしている。アドバンテスト・ソフトバンクG・東京エレクトロン・キオクシアHDの4銘柄だけで日経平均を約979円押し下げた。下げ幅1,259.61円のうち77.7%である。うちアドバンテスト1銘柄で約617円、単独で下げ幅の49.0%を説明してしまう。
業種別では11業種が上昇している。保険、海運、輸送用機器、鉱業——金利上昇の恩恵を受ける業種、原油高の恩恵を受ける資源・商社、そして円安方向への揺り戻しで買われた自動車だ。下落した22業種の中心は非鉄金属、電気機器、石油石炭、サービス。つまり本日の相場は全面安ではなく、AI・半導体から資源・金融・自動車への資金移動だった。
2利上げそのものは、もう材料ではない
日銀は17〜18日の決定会合で政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げる方針だと報じられた。追加利上げは6月会合以来3カ月ぶりで、2024年3月以降の利上げ局面では最短の間隔になる。1.25%という水準は1995年以来だ。
だが債券市場はとうに動き終えている。9月2日には10年債利回りが一時3.015%と1996年以来の高水準を更新し、市場が織り込む政策金利の最終到達点は2.5%に迫っている。利上げの有無ではなく、利上げの「その次」をどう語るかに焦点は移っている。
見落とされやすいのは、FOMCの結果公表も9月18日だという点だ。FRBは7月会合でFF金利の誘導目標を3.50〜3.75%に据え置いたが、全会一致ではなく、投票権を持つ12名のうち3名が利上げを支持している。通常、反対票は利下げ方向に出るものだ。逆方向に3票出たという事実は、9月のFOMCが「据え置きか利下げか」ではなく「据え置きか利上げか」の会合になりうることを示す。
3「利上げしても円安」が繰り返された理由
ここが本題だ。日米の政策金利差は2024年3月時点の5.33ptから、9月利上げ後には2.38ptまで縮む。2.95ポイント、率にして55.4%の縮小である。教科書どおりなら円は買われるはずだった。
現実はそうならなかった。2026年4月30日、ドル円は160円台後半から155円台へ急落したが、これは日本単独の円買い介入によるものだ。6月16日に日銀が0.75%から1.00%へ利上げした後も円安は続いた。7月31日には日米が協調して円買い介入に踏み切り、164円接近から157円台へ戻した。そして本日、ドル円は154.30円。介入という外科手術を2回受けて、ようやくこの水準である。
- 差が縮んでも、差は残る:2.38ptという金利差は、絶対水準としてはなお大きい。キャリー取引の採算は「縮小したか」ではなく「まだ取れるか」で決まる
- 原油が実需のドル買いを生む:北海ブレントは1バレル109ドル、WTIも100ドル台を突破した。日本の原油輸入代金はドル建てで、価格上昇はそのまま実需のドル買い増加になる。金融政策とは無関係に効く経路だ
- 利上げの理由が円安であるという循環:今回の利上げは原油高と円安に起因する物価上振れリスクの抑制が狙いとされる。円安を止めるための利上げが、利上げ後のペース観測次第で再び円安を呼ぶなら、政策は自分の尻尾を追うことになる
実際、市場関係者の間では「9月会合で利上げに踏み切っても、その後の利上げペースが市場の織り込みよりも緩やかとの見方が広がれば、円相場が再び下落に転じる可能性がある」という整理が共有されている。利上げは円高材料だが、ハト派的な利上げは円安材料になりうる——この非対称が、9月18日の最大の論点だ。
49月18日の4象限——日銀とFRBが同じ日に動く
日銀の利上げはほぼ織り込まれている。変数はFRB側と、利上げ後の情報発信の強さだ。両者を組み合わせると4つの組み合わせになる。以下は筆者による整理であり、確度を保証するものではない。
| 日銀 | FRB | 金利差の読み | 想定される反応 |
|---|---|---|---|
| 日銀 1.25% + タカ派 | FRB 据え置き | 金利差2.38pt。円買い materialが最も揃う組み合わせ | 円高/輸出株に逆風、銀行株に追い風 |
| 日銀 1.25% + タカ派 | FRB 利上げ | 差は2.62ptのまま。日銀のタカ派度がどこまで相殺できるか | 方向感が出にくい。株はボラティリティ上昇 |
| 日銀 1.25% + 慎重姿勢 | FRB 据え置き | 利上げが「打ち止め」と読まれれば材料出尽くし | 円安再開/160円の防衛ラインが再び意識される |
| 日銀 1.25% + 慎重姿勢 | FRB 利上げ | 差が再拡大する唯一の組み合わせ | 円安加速/3度目の介入観測が浮上 |
注意したいのは、4象限のうち2つが円安方向だという点だ。「日銀が利上げするのだから円高」という単線的な見立ては、起こりうる組み合わせの半分しかカバーしていない。
5来週、どこを見るか
- 本日の米CPI:原油高がインフレ率に転嫁され始めているかを測る最初の指標。ブレントが8月3日の82.41ドルから109ドルへ+32.3%上昇した影響は、まだ完全には反映されていない
- 日銀の声明文と総裁会見のトーン:利上げ幅ではなく、次回以降への言及の強さ。ここが市場の織り込みより弱ければ円は反転しやすい
- FOMCのドットチャート:2026年末のFF金利予想中央値が前回から切り上がるかどうか。切り上がれば金利差の縮小シナリオは崩れる
- 160円という水準:市場が政府の防衛ラインとして意識してきた節目。ここに接近すれば、3度目の介入観測が相場の重石になる
- 日経平均とTOPIXの乖離:本日のような2.97倍の開きが続くなら、指数を見て相場を語ること自体が誤差を生む。業種別の資金移動を追う方が実態に近い
日銀の利上げは、すでに価格に入っている。10年債利回りは3.015%まで上昇し、ターミナルレート予想は2.5%に迫っている。9月18日に1.25%が発表されても、それ自体はニュースにならない。
動くのは、その先の道筋が語られる瞬間だ。政策金利差は5.33ptから2.38ptへ55.4%縮んだにもかかわらず、ドル円は2度の介入を経てなお154.30円にいる。この事実が示すのは、金利差は為替を動かす要因のひとつにすぎないということだ。原油高が生む実需のドル買い、対外投資フロー、そして「次の一手」への期待——これらが金利差の縮小分を食い潰してきた。
そして本日の相場が教えるのは、指数の数字を額面どおりに受け取る危うさだ。日経平均-1.93%という見出しの裏で、TOPIXは-0.65%しか下げておらず、下げ幅の77.7%はわずか4銘柄が作っていた。マクロのニュースがセクターごとに符号の違う影響を与える局面では、指数はもはや相場の代表値ではない。
本記事は市場データおよび公表情報に基づく筆者の分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。日銀の政策決定に関する記述は2026年9月11日時点の報道に基づくもので、会合の結果を確約するものではありません。株価・為替・商品価格は変動し、投資元本を割り込む可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。数値は2026年9月11日大引け時点。
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本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

