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食品消費税1%で得する会社・損する会社|税率差9ポイントと2つの数字のワナ

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食品消費税1%で「得する会社・損する会社」――税率差9ポイントが動かす需要と、2つの“数字のワナ”

9月15日、飲食料品の消費税を2027年4月1日から2年間、8%→1%に下げる大綱が閣議決定されました。スーパーは追い風、外食は逆風――と一言で片付けられがちですが、決算書に出てくる「納税額の増加」や「還付」は見かけほど損益に効きません。本当に業績を動かすのは店内飲食との税率差が2→9ポイントに開くことです。

飲食料品の税率8% → 1%
店内飲食との税率差2 → 9pt
期間2027.4〜2029.3
法案の状況国会審議待ち

この記事のポイント

  • 税抜1,000円の食事で、持ち帰りと店内飲食の差は20円→90円(4.5倍)。外食の「割高感」は1.9%から8.9%へ跳ね上がる
  • 店内飲食中心の飲食店は納付税額が年112万円増える試算があるが、仕入値が下がれば実質負担は相殺される。本当の逆風は客数
  • 食品スーパーの「還付」は利益ではなく、先払いした税の戻り。見るべきは客数と値付け
  • 2年で元に戻る時限措置。外食の業態転換も、株価の織り込みも「2年」という短さに縛られる

01何が決まったのか:3つの税率が並ぶ2年間

政府は8月5日に基本方針、9月15日に大綱を閣議決定し、国税庁も同日にパンフレットとQ&Aを公表しました。2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、酒類と外食を除く飲食料品の税率を1%(国0.78%+地方0.22%)に下げます。対象範囲は今の軽減税率とまったく同じで、テイクアウト・出前は1%、店内飲食は10%、酒類も10%のままです。

区分現行2027年4月〜
食料品(スーパー・持ち帰り・出前)8%1%
店内飲食(外食)・酒類10%10%
新聞の定期購読8%8%
電気・家賃・物流・資材など10%10%

ゼロではなく1%になったのは、レジ改修に1年前後かかるという事業者側の事情が大きく、残りの1%分は中低所得の就業者への「就業者負担軽減支援金」で返し、全体で“実質ゼロ”にする設計です。ただし関連法案はまだ国会で成立していません。株式市場はこの「未確定」を前提に動いている点を最初に押さえておきましょう。

02本丸は「税率差9ポイント」:持ち帰りとの差は4.5倍に

同じ税抜1,000円の食事でも、持ち帰れば1,010円、店内で食べれば1,100円。これまでは20円だった差が90円に広がります。店内飲食の上乗せ率で言えば1.9%→8.9%です。

税抜1,000円の同じ食事にかかる消費税(円)現行持ち帰り・中食・内食税80円(税込1,080円)店内飲食(外食)税100円(税込1,100円)差 20円2ポイント2027年4月〜2年間持ち帰り・中食・内食税10円(税込1,010円)店内飲食(外食)税100円(税込1,100円)差 90円9ポイント
税抜1,000円の同じ食事にかかる消費税(円)現行持ち帰り・中食・内食税80円(税込1,080円)店内飲食(外食)税100円(税込1,100円)→ 店内飲食との差 20円(2ポイント)2027年4月〜2年間持ち帰り・中食・内食税10円(税込1,010円)店内飲食(外食)税100円(税込1,100円)→ 店内飲食との差 90円(9ポイント)
図1|税抜1,000円に乗る消費税額。持ち帰り・中食・内食は80円→10円に下がる一方、店内飲食は100円のまま。差は20円→90円(4.5倍)。

先例:2ポイント差でも客数は落ちた

2019年10月に軽減税率が始まったとき、差はたった2ポイントでした。それでも日本フードサービス協会(JF)によれば、直後の家計の外食支出は前年同月比-6.2%、会員社の客数は-5.4%と大きく落ち込みました。一方でファストフードだけは売上が前年を上回り、持ち帰り比率が上がった店もあったと報告されています。

※2019年10月は台風19号の休業も重なっており、税率差だけの効果ではありません。JFの椋本会長は今回、来客数が20%以上減るとの見方もあると危機感を示しています。

ここから読み取れるのは、逆風の強さは「外食かどうか」ではなく店内で食べる理由がどれだけ強いかで決まる、ということです。持ち帰りに切り替えやすい業態は税率差をむしろ集客に使え、店内の体験そのものが商品の業態は価格よりも利用動機の問題になります。いちばん苦しいのは、日常食としての店内利用が中心で、持ち帰りに向かないメニュー構成の業態です。

03数字のワナ①:飲食店の「納税額+112万円」は損失ではない

税理士の試算では、年商4,000万円・食材1,600万円の店内飲食中心の飲食店(本則課税)で、納付税額が152万円→264万円と112万円増えるとされます。売上の税率は10%のまま、食材の仕入税額控除だけが8%→1%に縮むからです。

しかし食材の仕入先が減税分をそのまま値下げすれば、飲食店が払う食材代(税込)も同じ112万円だけ減ります。税務署に多く払う分と、仕入先に払わなくて済む分がぴったり打ち消し合うのです。

モデル:年商4,000万円・食材1,600万円・他経費1,200万円(税抜)、本則課税① 消費税の納付額(万円/年)現行(食材8%)152引下げ後(食材1%)264(+112)② 実質の食材コスト増(万円/年)仕入先が減税分を値下げに回す割合で決まる完全転嫁(100%)+0半分転嫁(50%)+55.4転嫁ゼロ(0%)+110.9
モデル:年商4,000万円・食材1,600万円他経費1,200万円(税抜)、本則課税① 消費税の納付額(万円/年)現行(食材8%)152引下げ後(食材1%)264(+112)② 実質の食材コスト増(万円/年)仕入先が減税分を値下げに回す割合で決まる完全転嫁(100%)+0半分転嫁(50%)+55.4転嫁ゼロ(0%)+110.9
図2|納付税額の増加と実質負担は別物。仕入先が減税分を完全に値下げすれば実質負担は+0万円、半分なら+55.4万円、まったく下げなければ+110.9万円。税の計算は同じでも、損益は転嫁率で決まる。

つまり飲食店の損益を左右するのは税額ではなく、①仕入先がどこまで値下げするか、②客数がどれだけ持ち帰りに流れるか、の2点です。①は物価高で仕入値が上がり続ける局面では「減税分が値上げに吸収される」形で見えにくくなる恐れがあり、企業の説明と原価率の推移を突き合わせる必要があります。

※簡易課税の飲食店は食材の控除額が変わらないため、この税額増は発生しません。ただし店内飲食だけの個人店が簡易課税に切り替えるには、原則どおり2026年12月31日(3月決算法人は2027年3月31日)までの届出が必要とされています。

04数字のワナ②:食品スーパーの「還付」は利益ではない

逆に食品スーパーやメーカーは、売上にかかる税は1%に下がるのに、電気代・家賃・物流費など経費の10%はそのまま。預かる税より払う税が多くなり、還付を受ける側に回ります。

年商10億円の食品スーパー(万円)現行8%引下げ後
売上で預かる税8,0001,000
仕入・経費で払った税6,8001,900
差引納付 1,200還付 900

前提:売上10億円・食品仕入7億円・その他課税経費1.2億円(いずれも税抜)。税理士による試算モデルを再計算。

納付1,200万円が還付900万円に変わり、税の流れは2,100万円も動きます。ですが本体価格を据え置いて減税分を値下げしている限り、税抜の売上も粗利も変わりません。還付は“儲け”ではなく、経費で先に払った税が後から戻ってくるだけです。

むしろ注意点は資金繰りです。経費の10%は毎月出ていくのに、還付は申告後。全国の食品事業者が一斉に還付申告を出せば、入金が遅れる可能性も指摘されています。課税期間を3カ月や1カ月に短縮すれば還付を前倒しできますが、その届出期限は2027年3月31日です。

では食品スーパーの本当の恩恵は何か。それは外食から流れてくる需要(惣菜・弁当・食材)と、減税で総額が下がることで生まれる値付けの余地です。ただし後者は「減税分を懐に入れた」と見られるリスクと表裏一体。減税効果が1カ月ほどで値上げに相殺されかねない、という現場の声もあります。

05恩恵と逆風のマップ:どこを見れば勝ち負けがわかるか

ここまでを整理すると、影響は「需要が流れ込む側か、流れ出る側か」という構造要因と、「2年間の事務・資金繰り」という一時要因に分けられます。

← 売上が1%側(食品販売)売上が10%側(店内飲食)→恩恵|需要が流れ込む側食品スーパー・ディスカウント食品比率の高いドラッグストア惣菜・弁当(中食)持ち帰り比率の高いFF逆風|需要が流れ出る側ファミリーレストラン回転寿司・定食・牛丼の店内客居酒屋(酒類はもともと10%)テイクアウト転換の難しい業態一時負担|売上1%・経費10%食品スーパーの還付待ち(資金繰り)食品メーカー・卸の還付待ち値札・カタログ・受発注の切替特需|改修・区分経理POSレジ・セルフレジ更新会計・受発注ソフトの税率対応飲食店のテイクアウト設備上段=客数・売上に効く構造要因 / 下段=2年間の一時的なコスト・需要
恩恵|需要が流れ込む側食品スーパー・ディスカウント食品比率の高いドラッグストア惣菜・弁当(中食)持ち帰り比率の高いFF逆風|需要が流れ出る側ファミリーレストラン回転寿司・定食・牛丼の店内客居酒屋(酒類はもともと10%)テイクアウト転換の難しい業態一時負担|売上1%・経費10%食品スーパーの還付待ち(資金繰り)食品メーカー・卸の還付待ち値札・カタログ・受発注の切替特需|改修・区分経理POSレジ・セルフレジ更新会計・受発注ソフトの税率対応飲食店のテイクアウト設備上2段=構造要因/下2段=一時的
図3|恩恵と逆風のマップ。上段は客数・売上に効く構造要因、下段は還付待ちやシステム改修など2年間に限られる要因。
区分連想されやすい銘柄例答え合わせの指標
恩恵
食品小売・中食
イオン(8267)、ライフコーポレーション(8194)、神戸物産(3038)、コスモス薬品(3349)など月次の既存店客数、惣菜売上、粗利率(値付けの余地を使ったか)
逆風
店内飲食中心
すかいらーくHD(3197)、サイゼリヤ(7581)、ゼンショーHD(7550)、FOOD & LIFE COMPANIES(3563)など月次の既存店客数、テイクアウト比率の開示、原価率
転換組
持ち帰り強化
弁当など持ち帰り商品を打ち出すすかいらーく、テイクアウト拡大に備えるロイヤルHD(8179)持ち帰り売上の伸びが店内客数の減少を埋められるか
特需
レジ・会計
POSレジ、会計・受発注ソフト関連改修需要の受注・売上計上時期(2026年度後半〜2027年春に集中しやすい)

※銘柄は報道や市場で「連想されやすい」例を挙げたもので、推奨ではありません。食品比率・テイクアウト比率・業績への寄与度は各社で大きく異なるため、必ず各社の開示で確認してください。

市場の反応はすでに出ています。7月31日には外食株が軒並み安となり、すかいらーくHDは一時前日比3.67%安の3,175円をつけました。高市首相が1%案を表明した直後の動きで、サイゼリヤ、ゼンショーHD、F&LCなども下げました。「外食=逆風」はすでに株価にある程度織り込まれていると考えるのが自然です。

06日程と「2年で終わる」ことの意味

2026/8/5基本方針を閣議決定2026/9/15大綱を閣議決定・国税庁Q&A公表2026年秋臨時国会で関連法案を審議(未成立)2027/1/1経過措置の指定日(定期便・通販)2027/3/31課税期間短縮の届出期限(還付前倒し)2027/4/1施行:飲食料品 8% → 1%2027/6〜就業者負担軽減支援金の給付開始(予定)2029/3/31期限到来 → 4/1から8%へ戻る
2026/8/5基本方針を閣議決定2026/9/15大綱を閣議決定・国税庁Q&A公表2026年秋臨時国会で関連法案を審議(未成立)2027/1/1経過措置の指定日(定期便・通販)2027/3/31課税期間短縮の届出期限(還付前倒し)2027/4/1施行:飲食料品 8% → 1%2027/6〜就業者負担軽減支援金の給付開始(予定)2029/3/31期限到来 → 4/1から8%へ戻る
図4|今後の日程。2026年9月25日時点。法案成立前のため、日程や内容は国会審議で変わる可能性がある。

この政策のもう一つの特徴は、2029年4月に8%へ戻ることです。外食側から見れば、2年のためだけに業態を変えるのは割に合わないという判断もあり得ます。JFの会長も、2年のために今の業態をテイクアウト寄りに振るのかと疑問を呈し、外食向けのプレミアム食事券を求めています。政府側はテイクアウト導入やセルフレジ設置の支援を用意していますが、補助率などの詳細は年末の予算編成で決まります。

投資家にとっての教訓は、株価は施行前に期待で動き、施行後は月次データで答え合わせされるということです。2027年4月以降の月次既存店データが、外食の客数減が一時的か、2019年型の構造的な流出か、を示すことになります。そして2029年春には逆方向の「駆け込み外食」「中食からの戻り」も起こり得ます。

まとめ:減税の勝ち負けは「税額」ではなく「客の動き」で決まる

  1. 本丸は店内飲食との税率差の拡大(2→9ポイント)。外食の割高感は1.9%→8.9%に
  2. 飲食店の「納税額+112万円」は、仕入値が完全に下がれば相殺される。見るべきは客数と原価率
  3. 食品スーパーの「還付900万円」は利益ではなく資金繰りの話。恩恵の本体は外食からの需要流入
  4. 法案は未成立で、措置は2年で終わる。月次データでの答え合わせは2027年4月以降
  • 出典:内閣官房「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(2026年9月15日)
  • 国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」パンフレット・Q&A(2026年9月)
  • いしい税理士・行政書士事務所「食料品の消費税1%|大綱と国税庁Q&Aで判明した届出などの実務対応」(飲食店・食品スーパーの試算モデル)
  • 食品新聞、日本経済新聞(日本フードサービス協会の会見、外食株の値動き、支援策の報道)

本記事は2026年9月25日時点の公表資料・報道をもとにした情報提供であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。関連法案は国会で審議中で、内容・日程は変更される可能性があります。試算は単純化したモデルであり、実際の税額は事業者の状況により異なります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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この記事を書いた人

睦月六弦

ITエンジニア × 長期投資家

投資歴は約10年。FXや信用取引など短期売買での失敗を経て、現在は個別株とインデックス投資を中心に、長期保有を基本とした運用を続けています。本業のITエンジニアの仕事柄、数字やデータから「なぜそうなるのか」を考えるのが好きです。

「上がる・下がる」だけでなく、なぜ動いたのか、そのニュースが企業や投資にどうつながるのかを、決算・金利・為替などの数字や一次情報をもとに読み解いています。

本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。