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2026年6月26日

マイクロン決算が火をつけた
「HBM連鎖」の正体

日本の半導体株がなぜ一斉に動くのか——メモリ好況が伝わる5つの経路を、初心者にもわかる言葉で解説します

売上高+346%(前年同期比) 粗利率 84.9%(製造業で前例なし) 純利益 15倍(4.6兆円) Q4ガイダンス $500億(予想大幅超え) 2027年以降も供給逼迫(CEO明言)

📋 この記事でわかること

米半導体大手マイクロン・テクノロジー(MU)が6月24日に発表した決算は「売上・粗利率・EPS」すべてで過去最高を更新する異次元の好業績でした。翌朝の東京市場では日経平均が一時2,900円超上昇。アドバンテスト・キオクシア・東京エレクトロンが急騰しました。なぜ米国の1社の決算が日本株をこれほど動かすのか。メモリを中心に広がる「サプライチェーン伝播」の仕組みをゼロから解説します。

まず押さえたい3つの用語

HBM(広帯域メモリ)
AIが計算する際に「作業台」として使う超高速メモリ。ChatGPTのようなAIを動かすGPUチップに積み重ねて搭載します。速ければ速いほどAIが賢くなり、現在世界中で奪い合いの状態です。
DRAM・NAND
DRAMはパソコンやサーバーの「作業机」(電源を切ると消える)、NANDはUSBメモリやSSDの「引き出し」(電源を切っても残る)。マイクロンはこの2種類を世界シェア3位以内で製造しています。
サプライチェーン
製品が完成するまでの「素材→部品→製造→検査→出荷」という一連の流れ。半導体は工程が複雑で、1つの会社が好調になると川上から川下まで連鎖的に恩恵が広がります。
01

マイクロン決算、何がすごかったのか

2026年6月24日(米国時間)、マイクロンが発表した2026年3〜5月期の決算は、あらゆる指標が過去最高を更新しました。

売上高は前年同期比346%増の414億ドル(約6.7兆円)。粗利率は84.9%(前年同期は39%)。純利益は前年同期比15倍の282億ドル(約4.6兆円)。これらの数字は、市場予想をそれぞれ大幅に上回っていました。

さらに注目されたのがCEOの発言です。「2027年以降もメモリの供給が逼迫した状態が続くと予想する」と明言。好況が「一時的なブーム」ではなく複数年にわたる構造的な変化であることを経営陣自ら確認したことで、投資家の安心感が広がりました。

図1|マイクロン 売上高・粗利率の四半期推移
500 400 300 200 100 売上高(億ドル) FY25 Q1 FY25 Q2 FY25 Q3 FY26 Q2 FY26 Q3 $79B $84B $93B $239B $415B 29% 33% 39% 75% 84.9% 売上高(億ドル) 粗利率

※売上高はFY25Q1〜Q3を100億ドル単位で簡略表示。FY26Q1は省略。出所:マイクロン決算資料をもとに編集部作成

02

「1社の決算」が日経平均を動かす仕組み

マイクロンの好決算がなぜ、日本株に波及するのでしょうか。鍵は半導体のサプライチェーン(製造の連鎖)にあります。

半導体チップは、一社だけで完成するものではありません。「素材→製造→検査→同業競合」という連鎖の中で、マイクロンは「メモリ製造」を担うプレイヤーです。この連鎖の各層に、日本企業が世界シェアトップクラスで入り込んでいます。

図2|HBMサプライチェーン伝播図(川上〜川下)
マイクロン好決算 → 日本株への伝播ルート マイクロン(MU) DRAM・NAND・HBM製造 ← 今回の好決算 売上+346% ↓ メモリ好況 → 設備投資増(FY2026で約4.4兆円) 【川上】素材・ウエハ 信越化学工業(4063) SUMCO(3436) シリコンウエハ供給 【核心】製造・検査装置 アドバンテスト(6857)★ 東京エレクトロン(8035) HBMテスター世界首位級 【同業】メモリ製造 キオクシア(285A)★ SKハイニックス(韓) 同市況でNAND価格上昇 日本の半導体関連株が一斉上昇 アドテスト+12.7% キオクシア+14.75% 東エレク+大幅高 日経平均 一時2,900円超上昇 日経平均株価 一時72,648円台 (アドテスト・東エレク・キオクシア3社で約1,700円押上げ) ★=直接的な恩恵を受けた日本企業

出所:各社決算・報道をもとに編集部作成。矢印は価格・業績への影響伝播ルートを示す(投資推奨ではありません)

図のポイントを言葉で補足します。マイクロンが好決算→メモリ価格の高騰が証明される→増産のための設備投資が拡大→製造装置・検査装置の受注が増える、という流れです。

特にアドバンテスト(6857)が注目される理由は、HBMの「検査工程」で世界首位級のシェアを持つからです。AIの心臓部であるGPUにはHBMが不可欠で、そのHBMが正常に動くかを確認する検査装置を握っているのがアドバンテストです。

03

メモリはなぜ「急騰・急落」を繰り返すのか

半導体、特にメモリ製品は歴史的に「急騰と急落を繰り返すサイクル型産業」として知られています。今回の好況もサイクルの一局面であることを理解したうえで投資判断することが重要です。

図3|メモリ需給サイクルの模式図(現在地:好況期)
① 供給不足 AI需要が爆発的に拡大 メモリが足りない →価格が急騰 粗利率が急上昇 (今回:84.9%) 設備投資が加速 ◀ 現在地(2026年) ② 増産期 工場・設備が完成 生産量が増加 価格は高止まり or 上昇鈍化 需要 ≈ 供給 (2027年〜か) ③ 供給過剰 設備投資の結果 供給が需要を超過 →価格が急落 粗利率が急低下 赤字になる企業も (過去に複数回経験) ④ 調整期 減産・投資抑制 在庫が消化される 需要 > 供給 へ 再び①へ戻る →サイクル繰り返し → → → ⚠ 今回のCEO発言「2027年以降も供給逼迫」は①の延長示唆。ただしAIの「構造的需要」が従来サイクルを塗り替えている可能性もある メモリは歴史的に③・④への転落が急激なため、過熱局面では利益確定・分散投資の視点が重要

出所:半導体産業の一般的なサイクル論に基づき編集部作成。将来の価格動向を保証するものではありません

今回のマイクロンが示した「粗利率84.9%」という数字は、裏を返せば「これ以上は上がりにくい水準」でもあります。メモリ価格が正常化(低下)すれば、粗利率は急速に圧縮されます。過去にも同様の急落は何度も起きていました。

一方、今回が「従来とは異なる」理由もあります。AI向けデータセンターの需要がかつてないスピードで拡大しており、CEOが明言した「複数年の供給逼迫」が実現すれば、サイクルの高水準期が長続きする可能性があります。

04

日本の半導体株——それぞれの「立ち位置」の違い

同じ「半導体関連株」でも、マイクロン決算の恩恵の「受け取り方」は企業によって異なります。自分が投資を検討する前に、各社の位置づけを理解しておきましょう。

図4|主要日本半導体関連株の株価反応比較(2026年6月25日)
+16% +12% +8% +4% 0% +14.75% キオクシア 285A NAND専業・同業 +12.7% アドバンテスト 6857 HBMテスター首位 +7.0% 東京エレクトロン 8035 製造装置大手 +5.5% ディスコ 6146 切削・研削装置 +4.0% SUMCO 3436 シリコンウエハ ※2026年6月25日の日中高値ベース。出所:各種報道より編集部集計。概算値。投資成果を示唆するものではありません 同業(直接恩恵) 検査装置(直接恩恵) 製造装置(間接恩恵) その他装置 素材(川上)

※上昇率は概算。出所:各種報道をもとに編集部作成。個別銘柄の投資推奨ではありません

株価の反応幅を見ると、マイクロンとの距離(サプライチェーン上の位置)が近いほど大きく動く傾向があります。同業のキオクシアとHBMテスターのアドバンテストが最も大きく反応し、川上の素材メーカー(SUMCO等)は反応が相対的に小さい、という構図です。

05

これからどうなる?3つのシナリオで整理する

好決算を受けて急騰した後の局面でも、いくつかのシナリオが考えられます。投資判断の前にリスクとリターンを整理しておきましょう。

図5|今後3〜12ヶ月のシナリオマトリクス(強気/中立/弱気)
シナリオ別の注目ポイントと想定される日本株への影響 🟢 強気シナリオ 🔵 中立シナリオ 🔴 弱気シナリオ ▶ 前提条件 AI需要が想定以上に加速 HBM4量産が順調進行 供給逼迫が2028年以降も継続 需給バランスが2027年に 緩やかに正常化 価格は高水準を維持 AI投資の急ブレーキ 過剰設備投資による 価格崩落(2025年型) ▶ メモリ価格の見通し さらなる上昇 粗利率90%台も視野 横ばい〜緩やかに低下 粗利率70〜80%台維持 急落リスク 粗利率40%台へ急反落 ▶ 日本半導体株への影響 アドテスト・キオクシア さらなる上場来高値更新 日経平均 75,000円も 株価は横ばい〜小幅調整 決算ごとに一喜一憂 銘柄選別が重要に 大幅下落リスク キオクシア・アドテスト ▲30〜50%の下落も ▶ 注目すべきシグナル エヌビディアGPU増産継続 データセンター投資拡大 マイクロンQ4決算確認 在庫水準の上昇兆候 HBM価格の横ばい化 SKハイニックス決算動向 AIサービス投資削減報道 中国規制の再強化 スポット価格の急落

出所:各種アナリスト見通し・決算情報をもとに編集部作成。将来の株価・業績を保証するものではありません

📌 個人投資家へのポイント整理

  • マイクロン決算=日本株の「体温計」——HBM需要の強弱が、日本の半導体関連株全体の方向性を左右します
  • 伝播チェーンを意識する——アドバンテストはHBMテスター首位で「直接恩恵」、東エレクは製造装置で「間接恩恵」、SUMCOは川上素材でさらに遠い、という距離感を把握してから投資判断を
  • メモリはサイクル産業——粗利率84.9%は歴史的に見ても異常値です。AIによる「構造変化」を信じるにせよ、急落リスクに備えた分散投資は必須です
  • 次の確認ポイントはQ4決算(9月予定)——ガイダンスの$500億が実際に達成されるか、またHBM4の量産進捗がカギになります

【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載している株価・業績数値は2026年6月26日時点の各種報道に基づく概算値であり、正確性を保証するものではありません。

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この記事を書いた人

睦月六弦

ITエンジニア × 長期投資家

投資歴は約10年。FXや信用取引など短期売買での失敗を経て、現在は個別株とインデックス投資を中心に、長期保有を基本とした運用を続けています。本業のITエンジニアの仕事柄、数字やデータから「なぜそうなるのか」を考えるのが好きです。

「上がる・下がる」だけでなく、なぜ動いたのか、そのニュースが企業や投資にどうつながるのかを、決算・金利・為替などの数字や一次情報をもとに読み解いています。

本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。