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米国IPOウォッチ / AI熱狂の光と影

SB Energy, Inc.(ナスダック:SBE・上場予定)

SBエナジーIPO徹底解説:「収入ほぼゼロで時価総額500億ドル」は買いか?

ソフトバンクG傘下、OpenAI向けAIデータセンターを建てる米SBエナジー。日本から抽選に申し込める珍しい米国IPOですが、9月21日に上場延期の報道が出ました。事業・業績・競合比較・買える証券会社から、株式分割と希薄化、為替まで織り込んだ1株あたり株価のシナリオまで、数字で整理します。

想定時価総額約500億ドル
調達予定額50〜70億ドル
日本向け販売最大5億ドル(約775億円)
上場時期10月中旬以降に後ずれの報道

この記事の結論(4行)

  • SBエナジーは「電力+AIデータセンター」を一体で作る会社。ただし2026年6月末時点でデータセンターの稼働はゼロで、最初の収益計上は2026年10〜12月期の見込み。
  • 2026年上期の純損失32億ドルのうち約31.6億ドルは非現金費用で、実態は「大赤字」より「先行投資期」。問題は収益化までの距離と、顧客がソフトバンクG・OpenAIという関連会社に偏っている点。
  • 大手テック(マイクロソフト・アマゾン等)が原発と直接契約して電力を囲い込む中、SBエナジーの強みは「電力と建物をセットで早く用意できる」こと。弱みは顧客の分散が進んでいないこと。
  • 1株株価は公開価格25ドル(仮定)を起点に、弱気$17.5/基本$25/強気$35の3シナリオ。未確定のOpenAIワラント(将来の株数+約11.3%)と、円高による目減り(1ドル140円なら基本シナリオでも約-10%)も計算に入れておきたい。

01SBエナジーとは?ソフトバンクGの「AIの発電所」

SBエナジー(SB Energy, Inc.)は2019年に設立された、テキサス州などで事業を行う米国企業です。もとはメガソーラーや蓄電池を手がける再生可能エネルギー会社でしたが、生成AIの普及を受けてAIデータセンターの開発・運営へと軸足を移しました。データセンターは大量の電力を使うため、自前で発電設備を持つことが競争力になる、という発想です。

2026年1月にはソフトバンクGとOpenAIが合計約10億ドルを出資し、8月にはエヌビディアが計30億ドルの出資(IPO価格で15億ドル+公開価格の90%で買う先渡し契約15億ドル)を約束。これまでに190億ドル超のプロジェクト資金を調達しています。上場後もソフトバンクGが議決権の50%超を持つ予定です。

項目内容
正式名称SB Energy, Inc.
ティッカーSBE
上場市場ナスダック・グローバル・セレクト/ナスダック・テキサス
主幹事JPモルガン、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、シティ、みずほ
主要株主ソフトバンクG(議決権50%超)、OpenAI、経営陣。エヌビディアは議決権なしのクラスN株
ロックアップ既存株主180日間
公開価格・株数未定(上場前に株式分割を予定)

02最新ニュース:9月21日に目論見書を修正、上場は「延期」報道

9月1日に米SECへ目論見書(S-1)を公開提出し、当初は9月21日の週に価格決定との見方がありました。しかし9月21日に提出された修正版でも上場日や公開価格は空欄のまま。米NYTは「500億ドル超の評価額で十分な買い手が集まらず、上場を少なくとも10月中旬〜下旬へ遅らせる」と報じました。

一方で、Investing.comは関係者の話として「準備は計画どおり進んでいる」とも伝えており、情報は割れています。確かなのは、評価額への市場の疑問が表面化したという点です。同じ週にはAI関連の別の企業も上場を延期しており、AIインフラ全体への警戒感が背景にあります。

03業績:赤字32億ドルの正体は「非現金費用」

単位:百万ドル(同一スケール)2024年売上高 232純損失 -2042025年売上高 213純損失 -7882026年上期売上高 139純損失 -3,192
図1 売上高と純損失の推移(2026年は1〜6月)。出所:SBエナジー有価証券届出書(米国会計基準)をもとに作成

売上高は太陽光・蓄電池事業の小さな収入のみで、2026年上期は1.39億ドル(前年同期比+66.4%)。一方、純損失は32億ドルへ膨らみました。ただし内訳を見ると、OpenAIとの取り決めに伴うワラント負債の評価損が約25.7億ドル、株式報酬が約5.9億ドルで、合計約31.6億ドル分は現金が出ていかない会計上の費用です。

これを足し戻すと、上期の損失は概算で約30百万ドル程度まで縮みます(親会社帰属と連結の数値が混在する概算)。「稼げない会社」ではなく「まだ建設中の会社」と見るのが実態に近いでしょう。とはいえ自己資本比率は15.6%まで下がっており、借入依存の資金調達は重いリスクです。

2024年2025年2026年上期
売上高2.32億ドル2.13億ドル1.39億ドル
営業損益▲0.65億ドル▲6.42億ドル▲5.52億ドル
純損益▲2.04億ドル▲7.88億ドル▲31.92億ドル
自己資本比率40.9%28.5%15.6%

04成長のカギ:8.8GWのパイプラインがいつ「売上」に変わるか

単位:GW(データセンターはGW-IT)太陽光・蓄電池稼働中 2.2AIデータセンター建設中 0.8契約済・未着工 8.0稼働中 0
図2 電力設備とデータセンターの容量(2026年6月末)。出所:SEC提出書類をもとに作成

稼働中なのは太陽光・蓄電池の約2.2GWだけで、データセンターは0.8GW-ITが建設中、8.0GW-ITが契約済み(未着工)です。合計8.8GW-ITのパイプラインに対し、想定時価総額500億ドルは1GW-ITあたり約56.8億ドルを先に織り込む計算です。

  • 受注残:目論見書ベースで約4,390億ドル(データセンター約4,300億ドル+電力約100億ドル)。長期リース契約の総額で、想定時価総額の約9倍の「将来の売上予約」がある計算。
  • 顧客:主な顧客はソフトバンクG(テキサスのCosmosキャンパス)とOpenAI(テキサス・オハイオ)。エヌビディアはオハイオ案件の残存価値保証人。目論見書自身が「関連当事者向けリースが近い将来の売上の大部分」と明記している。
  • 資金:進行中の計画に巨額の資金(報道では1,740億ドル)が必要で、大半を借入で賄う想定。金利上昇に弱い構造。

05競合比較:大手テックの「電力囲い込み」とどう違う?

AIデータセンターの電力をめぐっては、大きく4タイプのプレーヤーが競っています。SBエナジーの立ち位置は「電力会社」と「データセンター賃貸業者」の中間で、両方を一体で持つのが特徴です。

タイプ代表例電力の確保方法SBエナジーとの関係
大手テックマイクロソフト、アマゾン、グーグル、メタ原発・再エネと長期購入契約で自ら囲い込む最大の競合であり潜在顧客。大手5社の設備投資は2025年に約3,830億ドル
専業(ネオクラウド)コアウィーブ(上場)、クルーソー(非上場)電力会社から調達/一部は自前の発電直接の競合。コアウィーブは稼働1.5GW・契約4.2GW超、クルーソーは契約4.9GW(OpenAI・オラクル向けアビリーン拠点)
電力会社コンステレーション、ビストラ、タレン既存の原発・火力を活用電力の売り手。データセンターは持たない
SBエナジーSBE太陽光・蓄電池を自社開発し、施設と一体で建設契約済み8.8GW-ITは専業大手より大きいが、稼働実績はゼロ

大手テックの囲い込みは年々本格化しています。マイクロソフトはコンステレーションと組んでスリーマイル島原発の再稼働電力を20年契約で確保し、アマゾンはタレンの原発隣接地にデータセンターを構え、グーグルは次世代の小型原子炉(カイロス)から電力を買う契約を結びました。電力そのものが「AIの取り合い資源」になっているわけで、SBエナジーの価値もこの文脈で測る必要があります。

SBエナジーの優位性

  • スピード:米国では送電網への接続待ちが数年単位になりがち。自前の発電所と土地を先に押さえているため、大手テックが一から建てるより早く「電力付きの施設」を渡せる。
  • 規模:契約済み容量(8.8GW-IT)は、上場している専業大手コアウィーブの契約容量(4.2GW超)の約2倍。
  • 資本の後ろ盾:ソフトバンクG・OpenAI・エヌビディアが株主兼顧客で、案件の立ち上げ資金を集めやすい。

SBエナジーの脆弱性

  • 顧客の偏り:コアウィーブはメタ・アンソロピック・OpenAIなど複数顧客に分散。SBエナジーは関連会社中心で、OpenAIの資金事情がそのまま業績リスクになる。
  • 大手テックの内製化:マイクロソフトやアマゾンが自社で電力を確保するほど、「電力付き施設を借りる」需要は細る可能性がある。
  • 金利と市場の空気:建設費の大半を借入で賄うモデルで、金利上昇局面では資金調達コストが重くなる。同じ週に他のAI関連企業も上場を延期したように、AI相場のムードにも左右されやすい。

06SBエナジー株を買えるネット証券会社比較

買い方は2通りあります。①上場前にIPO抽選へ申し込んで公開価格で買う、②上場後に市場で買う、です。①に対応する国内証券会社は限られます。

① IPO抽選に申し込める証券会社

証券会社申込手数料NISA特徴
SBI証券無料成長投資枠OK米ドル決済のみ。SBIハイパー預金10万円以上で当選確率アップ
楽天証券無料成長投資枠OKブックビルディングから抽選参加
PayPay証券——1万円から申込可。条件達成で1万円分の当選枠(配分上限あり)
みずほ証券——国内販売の主幹事(対面・ネット)
大和証券——国内販売で取扱い

② 上場後に市場で買う場合の手数料比較

証券会社売買手数料(課税口座)為替手数料NISAおすすめ度
SBI証券約定額の0.495%(上限22ドル)無料売買手数料0円◎ IPOも上場後も1社で完結
楽天証券約定額の0.495%(上限22ドル)無料売買手数料0円◎ 楽天ポイントが使える
マネックス証券約定額の0.495%(上限22ドル)買付時無料売買手数料0円○ 分析ツールが強い(IPO取扱なし)
松井証券約定額の0.495%無料(両替コスト完全無料)売買手数料0円○ 米国株サポートが手厚い
ウィブル証券無料1ドルあたり15銭—○ 1ドルから端株で買える
PayPay証券約定額の0.5%(現地時間帯)〜0.7%1ドルあたり35銭—△ 1,000円単位の金額指定

選び方の目安:IPO抽選も狙うならSBI証券か楽天証券。NISA成長投資枠でIPO株を買えるのはこの2社です。上場後に少額で試したいならウィブル証券の端株、コスト最優先ならNISA対応の大手3社が有力です。手数料は2026年9月時点で、変更されることがあります。

071株あたりの株価予想:3つのシナリオ

前提:株式分割と「希薄化」をやさしく

公開価格と株数はまだ決まっていません。上場前の株式数は約2,000万株で、このまま500億ドルで上場すると1株約2,500ドル(約39万円)になってしまいます。そこで会社は上場直前に株式分割を行う予定です。目論見書では分割比率が「◯対◯」と空欄のままですが、米国IPOでは1株10〜30ドル台に収めるのが一般的なので、100対1前後になると考えるのが自然です(筆者の推定)。

株式分割と希薄化のしくみ(100対1分割を仮定した例)分割前約1,997万株 × 約$2,504 = 時価総額500億ドル100対1で分割約20億株 × $25 = 時価総額500億ドル未確定ワラント行使+11.3%約22.3億株 × 約$22.5 = 時価総額500億ドル
図4 株式分割は「ピザを細かく切る」だけで、ピザの大きさ(時価総額)は変わらない。ワラント行使で切れ目が増えると1切れが小さくなる=希薄化(筆者作成の例示)

分割は1枚のピザを100切れにするようなもので、ピザ全体の大きさ(時価総額)は変わりません。注意したいのは、ピザの大きさはそのままで切れ目だけが増えるケースです。これを希薄化(ダイルーション)と呼び、1株あたりの価値が薄まります。

株が増える要因規模1株への影響
IPOでの新株発行調達50〜70億ドル(時価総額の約10〜14%)調達した現金が会社に入るので、上場時点では価値は薄まらない
エヌビディア向けクラスN株計30億ドル(時価総額の約6%)半分は公開価格の90%で発行されるため、既存株主にはわずかに不利
OpenAIワラント(上場時に行使)1,737,867個(分割前ベース)上場時の株数に含まれる
OpenAIワラント(未確定分)2,253,942個(分割前株数の約11.3%)条件を満たすと株数が約11.3%増え、時価総額が同じなら1株価値は約10.2%下がる

用語メモ:ワラントとは?

「1株0.01ドルで株を受け取れる権利」です。OpenAIはデータセンターの利用契約とセットで、分割前ベースで約399万株分(上場前株数の約20%)の権利を持っています。上期の巨額赤字の大半は、このワラントの評価損でした。

以上を踏まえ、ここでは公開価格25ドル・時価総額500億ドル(株数約20億株)を仮定し、時価総額のシナリオを1株あたりに直しました。円換算は1ドル=155円です。

上場後12か月の1株あたり株価シナリオ(仮定:公開価格25ドル=時価総額500億ドル)$17.5約2,713円弱気(350億ドル)$25.0約3,875円基本(500億ドル)$35.0約5,425円強気(700億ドル)仮定公開価格 $25
図3 上場後12か月の株価シナリオ(筆者試算。公開価格25ドルは仮定値)
シナリオ時価総額1株株価円換算公開価格比想定する展開
弱気350億ドル$17.5約2,713円-30%AI投資への警戒が続き、延期後に評価額を引き下げて上場。初のDC収益が遅れる
基本500億ドル$25約3,875円±0%予定どおり年末に初のDC稼働。赤字は続くが、パイプラインの消化が進む
強気700億ドル$35約5,425円+40%DC稼働が順調でOpenAI以外の顧客も獲得。AIインフラ株が再評価される

ポイントは、実際の公開価格が決まれば、この表の数字はすべて「公開価格からの上下率」として読み替えられることです。たとえば公開価格が20ドルに決まっても、時価総額が同じ前提なら比率はほぼ変わりません。逆に、延期の末に評価額が400億ドルへ下がって上場した場合、弱気シナリオとの距離が縮まるぶん、下値リスクは小さくなると考えられます。

08見落としがちな為替リスク:円高・円安で手取りはこう変わる

SBエナジーは米ドル建ての株です。ドルでの株価が変わらなくても、円高になれば円に戻したときの手取りは減り、円安なら増えます。下の表は、公開価格25ドル×1ドル155円(約3,875円)で買った1株が、12か月後にいくらになるかを、株価シナリオと為替の組み合わせで計算したものです(手数料・税金は除く)。

株価シナリオ1ドル=140円1ドル=155円1ドル=170円
弱気($17.5)約2,450円(-36.8%)約2,713円(-30%)約2,975円(-23.2%)
基本($25)約3,500円(-9.7%)約3,875円(0%)約4,250円(+9.7%)
強気($35)約4,900円(+26.5%)約5,425円(+40%)約5,950円(+53.5%)

基本シナリオ(ドル株価は横ばい)でも、1ドル140円の円高なら-9.7%、170円の円安なら+9.7%。為替だけで±1割動く計算です。弱気シナリオと円高が重なると損失は約37%、強気と円安が重なれば約+54%と、振れ幅は大きく広がります。

  • NISAでも為替リスクは消えない:非課税になるのは利益にかかる税金だけ。円高による目減りはそのまま受ける。
  • ドル決済の準備:SBI証券のIPOは米ドル決済のみ。円→ドルに両替した時点のレートで、円での取得単価が決まる。
  • 配当はない:赤字の成長企業で当面は無配。配当で為替の目減りを埋めることはできない。
  • 金利差に注目:日米の金利差が縮むと円高に振れやすい。日銀・FRBの政策発表は、株価だけでなく円換算の手取りにも効く。

まとめ:どう向き合うか

  • SBエナジーは「AIの電力」という本物のテーマを持つ一方、現時点の株価は将来の稼働を先取りした期待値。
  • IPO抽選は当たれば公開価格で買える貴重な機会。ただし米ドル決済・為替リスク(±1割は普通に動く)・180日後のロックアップ解除は要確認。
  • 株数の増加(OpenAIの未確定ワラント)と、大手テックの電力内製化という「じわじわ効く2つのリスク」も忘れずに。
  • 延期報道で条件が変わる可能性大。価格決定(プライシング)の発表を待ってから判断しても遅くない。

※本記事は2026年9月24日時点の公開情報(SEC提出書類、各社発表、報道)をもとに作成した情報提供であり、特定銘柄の売買を勧めるものではありません。株式分割比率・株数・株価シナリオ・為替水準は筆者の仮定に基づく試算で、将来の株価を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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この記事を書いた人

睦月六弦

ITエンジニア × 長期投資家

投資歴は約10年。FXや信用取引など短期売買での失敗を経て、現在は個別株とインデックス投資を中心に、長期保有を基本とした運用を続けています。本業のITエンジニアの仕事柄、数字やデータから「なぜそうなるのか」を考えるのが好きです。

「上がる・下がる」だけでなく、なぜ動いたのか、そのニュースが企業や投資にどうつながるのかを、決算・金利・為替などの数字や一次情報をもとに読み解いています。

本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。