為替解説|2026年9月24日
日銀が利上げしても円安が止まらない3つの理由。介入はあるのか
日銀は9月18日、政策金利を1.25%へ引き上げました。31年ぶりの高さです。それなのにドル円は利上げ前の水準から戻り、23日には158.40円まで円安が進みました。「金利を上げれば円高」という教科書どおりにならない理由を、数字で整理します。
この記事の結論(3行)
- 日銀が0.25%上げる2日前に、FRBも0.25%上げていた。日米の政策金利差は2.625%のまま縮んでいない。
- しかも利上げは事前にほぼ織り込み済みで、米国の景気指標が強くドルが買われた。日本の実質金利は約-0.55%とまだマイナス。
- 介入は「ドル高主導」「投機の円売りが少ない」などの理由で打ちにくい。円高への転換には、米国の景気減速か日銀の利上げ加速が必要。
01何が起きたか:利上げ直後から円安が再開
9月のドル円は大きく揺れました。月初は約160円の円安でしたが、日銀の利上げ観測が強まると9月7日には154.30円まで円高に。ところが日銀が実際に利上げした18日には158円台に戻り、23日には158.40円と、安値から4.1円の円安が進みました。
02理由①:FRBも同時に利上げしていた
為替を動かすのは、片方の国の金利ではなく2つの国の金利の差です。日銀が利上げする2日前の9月16日、FRBも全会一致で0.25%の利上げを決めていました。日米がそろって0.25%ずつ上げたので、差はまったく縮んでいません。
長期金利でも同じです。日本の10年債利回りは9月1日に3.0%と約30年ぶりの高さになりましたが、米10年債は23日に一時5.13%と2007年以来の水準へ。差は約2.13%あり、「ドルで持っていた方が利回りが高い」状態は続いています。
03理由②:「円安」ではなく「ドル高」だった
最近の値動きは、円が売られたというよりドルが買われたと見る方が実態に近いものです。9月23日に発表された米国の景況感指数(総合PMI)は58.4と5年超ぶりの高さで、仕入れ価格の指数も2022年10月以来の高水準でした。「米国はまだ利上げが必要」との見方が強まり、ドルが幅広い通貨に対して買われています。
ドル高と円安の違い
ドル円の上昇には「円が弱くなった」場合と「ドルが強くなった」場合があります。ユーロや豪ドルなど他の通貨に対してもドルが上がっているなら、主役はドル高です。この場合、日本側の対策(利上げや介入)では流れを変えにくくなります。
04理由③:利上げは織り込み済み、実質金利はまだマイナス
市場は利上げを事前にほぼ100%織り込んでいました。9月初めの金利スワップ市場では、2年先の1年金利が2.4%台と、今後6回分(計1.5%)の利上げを先取りする水準まで上がっていたとの分析もあります。9月前半の円高は、まさにこの期待で進んだものでした。期待で買って、実際の発表で手じまうという典型的な動きです。
さらに、物価を差し引いた実質金利で見ると、日本はまだマイナスです。政策金利1.25%に対し、コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価)は+1.8%。企業物価は+7.6%とさらに高く、「利上げしても、お金を預けておく魅力は物価に負けている」状態が続いています。
05政府・日銀の介入はあるのか
日銀は9月18日、158.05円の水準で「レートチェック」(銀行に取引レートを問い合わせる、介入の前段階とされる動き)を行ったと伝えられています。それでもドル円はこの水準を上回っています。市場では、実際の介入は難しいとの見方が出ています。
| 介入が難しい理由 | 解説 |
|---|---|
| 投機の円売りが膨らんでいない | 介入は、たまった円売りの巻き戻しを誘うと効きやすい。今回は売り持ちが少なく、効果が一時的になりやすい |
| ドル高が主導している | 米国の景気と金利が原因のため、日本だけの円買いでは流れを変えにくい |
| 米国の都合と矛盾する | 介入資金は米国債を売って作るのが基本。米金利が5%台に上がる中、米国債売りは米国の金利抑制の思惑とぶつかる |
一方で、ベッセント米財務長官は9月初めに「円の大幅な過小評価に対処する措置を強く支持する」と発言しており、米国が円高方向を容認する姿勢は見せています。160円を明確に超えて急速に円安が進むような場面では、介入が現実味を帯びるでしょう。
06今後のシナリオと、個人投資家の備え
| シナリオ | きっかけ | ドル円の目安 |
|---|---|---|
| 円安継続 | 米景気が強いまま、FRBがさらに利上げ | 158〜162円(介入警戒) |
| 横ばい | 日米とも様子見。金利差が固定 | 155〜159円 |
| 円高転換 | 米景気の減速でFRBが利上げ打ち止め/日銀が利上げを前倒し | 150円台前半 |
大手銀行の2026年末の予想は150〜164円と大きく割れています。150円割れは「2027年の話」とみる声が多いのが現状です。
- 米国株・外貨資産を持つ人:今の円安は評価額を押し上げている。円高転換のシナリオでは、株価が横ばいでも円換算で目減りする点に注意。
- 日本株の輸出関連を持つ人:円安は追い風だが、円高に振れる局面では真っ先に売られやすい。
- これから外貨を買う人:一度に両替せず、時期を分けて買うと為替の振れを平均化できる。
まとめ:円相場を見るときの3つのものさし
- 日本の金利ではなく「日米の金利差」を見る。今は差が縮んでいない。
- 円安かドル高かを見分ける。今回はドル高が主役で、日本の対策が効きにくい。
- 実質金利を見る。物価を差し引くと日本はまだマイナスで、円を持つ魅力は弱い。
※本記事は2026年9月24日時点の公開情報(FRB・日本銀行の発表、各種報道)をもとに作成した情報提供であり、特定の通貨・銘柄の売買を勧めるものではありません。ドル円の節目の水準は報道ベースで、実質金利は筆者の簡易試算です。投資判断はご自身の責任でお願いします。
為替解説|2026年9月24日
日銀が利上げしても円安が止まらない3つの理由。介入はあるのか
日銀は9月18日、政策金利を1.25%へ引き上げました。31年ぶりの高さです。それなのにドル円は利上げ前の水準から戻り、23日には158.40円まで円安が進みました。「金利を上げれば円高」という教科書どおりにならない理由を、数字で整理します。
この記事の結論(3行)
- 日銀が0.25%上げる2日前に、FRBも0.25%上げていた。日米の政策金利差は2.625%のまま縮んでいない。
- しかも利上げは事前にほぼ織り込み済みで、米国の景気指標が強くドルが買われた。日本の実質金利は約-0.55%とまだマイナス。
- 介入は「ドル高主導」「投機の円売りが少ない」などの理由で打ちにくい。円高への転換には、米国の景気減速か日銀の利上げ加速が必要。
01何が起きたか:利上げ直後から円安が再開
9月のドル円は大きく揺れました。月初は約160円の円安でしたが、日銀の利上げ観測が強まると9月7日には154.30円まで円高に。ところが日銀が実際に利上げした18日には158円台に戻り、23日には158.40円と、安値から4.1円の円安が進みました。
02理由①:FRBも同時に利上げしていた
為替を動かすのは、片方の国の金利ではなく2つの国の金利の差です。日銀が利上げする2日前の9月16日、FRBも全会一致で0.25%の利上げを決めていました。日米がそろって0.25%ずつ上げたので、差はまったく縮んでいません。
長期金利でも同じです。日本の10年債利回りは9月1日に3.0%と約30年ぶりの高さになりましたが、米10年債は23日に一時5.13%と2007年以来の水準へ。差は約2.13%あり、「ドルで持っていた方が利回りが高い」状態は続いています。
03理由②:「円安」ではなく「ドル高」だった
最近の値動きは、円が売られたというよりドルが買われたと見る方が実態に近いものです。9月23日に発表された米国の景況感指数(総合PMI)は58.4と5年超ぶりの高さで、仕入れ価格の指数も2022年10月以来の高水準でした。「米国はまだ利上げが必要」との見方が強まり、ドルが幅広い通貨に対して買われています。
ドル高と円安の違い
ドル円の上昇には「円が弱くなった」場合と「ドルが強くなった」場合があります。ユーロや豪ドルなど他の通貨に対してもドルが上がっているなら、主役はドル高です。この場合、日本側の対策(利上げや介入)では流れを変えにくくなります。
04理由③:利上げは織り込み済み、実質金利はまだマイナス
市場は利上げを事前にほぼ100%織り込んでいました。9月初めの金利スワップ市場では、2年先の1年金利が2.4%台と、今後6回分(計1.5%)の利上げを先取りする水準まで上がっていたとの分析もあります。9月前半の円高は、まさにこの期待で進んだものでした。期待で買って、実際の発表で手じまうという典型的な動きです。
さらに、物価を差し引いた実質金利で見ると、日本はまだマイナスです。政策金利1.25%に対し、コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価)は+1.8%。企業物価は+7.6%とさらに高く、「利上げしても、お金を預けておく魅力は物価に負けている」状態が続いています。
05政府・日銀の介入はあるのか
日銀は9月18日、158.05円の水準で「レートチェック」(銀行に取引レートを問い合わせる、介入の前段階とされる動き)を行ったと伝えられています。それでもドル円はこの水準を上回っています。市場では、実際の介入は難しいとの見方が出ています。
| 介入が難しい理由 | 解説 |
|---|---|
| 投機の円売りが膨らんでいない | 介入は、たまった円売りの巻き戻しを誘うと効きやすい。今回は売り持ちが少なく、効果が一時的になりやすい |
| ドル高が主導している | 米国の景気と金利が原因のため、日本だけの円買いでは流れを変えにくい |
| 米国の都合と矛盾する | 介入資金は米国債を売って作るのが基本。米金利が5%台に上がる中、米国債売りは米国の金利抑制の思惑とぶつかる |
一方で、ベッセント米財務長官は9月初めに「円の大幅な過小評価に対処する措置を強く支持する」と発言しており、米国が円高方向を容認する姿勢は見せています。160円を明確に超えて急速に円安が進むような場面では、介入が現実味を帯びるでしょう。
06今後のシナリオと、個人投資家の備え
| シナリオ | きっかけ | ドル円の目安 |
|---|---|---|
| 円安継続 | 米景気が強いまま、FRBがさらに利上げ | 158〜162円(介入警戒) |
| 横ばい | 日米とも様子見。金利差が固定 | 155〜159円 |
| 円高転換 | 米景気の減速でFRBが利上げ打ち止め/日銀が利上げを前倒し | 150円台前半 |
大手銀行の2026年末の予想は150〜164円と大きく割れています。150円割れは「2027年の話」とみる声が多いのが現状です。
- 米国株・外貨資産を持つ人:今の円安は評価額を押し上げている。円高転換のシナリオでは、株価が横ばいでも円換算で目減りする点に注意。
- 日本株の輸出関連を持つ人:円安は追い風だが、円高に振れる局面では真っ先に売られやすい。
- これから外貨を買う人:一度に両替せず、時期を分けて買うと為替の振れを平均化できる。
まとめ:円相場を見るときの3つのものさし
- 日本の金利ではなく「日米の金利差」を見る。今は差が縮んでいない。
- 円安かドル高かを見分ける。今回はドル高が主役で、日本の対策が効きにくい。
- 実質金利を見る。物価を差し引くと日本はまだマイナスで、円を持つ魅力は弱い。
※本記事は2026年9月24日時点の公開情報(FRB・日本銀行の発表、各種報道)をもとに作成した情報提供であり、特定の通貨・銘柄の売買を勧めるものではありません。ドル円の節目の水準は報道ベースで、実質金利は筆者の簡易試算です。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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