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日米金利差と円安の関係|FOMC・日銀が48時間で連続する7月末に何が起きるか

中央銀行ウォッチ

日米そろって「利上げ方向」なのに、円は40年ぶり安値

7月28日のFOMCと7月30日の日銀会合が、48時間差で連続します。教科書どおりなら日本の利上げは円高要因のはず。それでもドル円は163円台に乗せました。この「ねじれ」がどこから来ているのかを、金利差・実質金利・実需フローの3層に分けて読み解きます。

ドル円163円台
FOMC7/28–29
日銀会合7/30–31
日銀7月据え置き予想回答者全員

30秒サマリー

  • 来週は日米の金融政策が48時間で連続する。FOMCが7月28〜29日、日銀会合が7月30〜31日。
  • 米国は新議長の下で利上げ方向、日本も6月に1.00%へ引き上げ済みで追加利上げ待ち。方向は同じ。
  • それでもドル円は1986年12月以来の水準。金利差の「水準」では説明しきれない。
  • 効いているのは利上げのペース差マイナス圏の実質金利原油高による実需の円売りの3つ。
  • 来週の焦点は、日銀「展望レポート」の物価見通しと、為替介入の警戒ライン。

来週、何が起きるのか

まず日程を整理します。米連邦公開市場委員会(FOMC)が7月28〜29日、日銀の金融政策決定会合が7月30〜31日。結果発表のタイミングで見れば、日本時間で実質48時間のあいだに世界の2大中銀が答えを出すことになります。

7/28–29
FOMC/FF金利の誘導目標は現在3.50〜3.75%。金利先物では今回の据え置き織り込みが優勢だが、9月会合の利上げ織り込みは高止まり。
7/30–31
日銀決定会合/政策金利は1.00%。市場調査では回答者全員が据え置きを予想。同時に「展望レポート」を公表。
7/31
総裁会見/据え置きが既定路線であるぶん、次回以降のガイダンスと物価見通しの修正がすべての焦点になる。

重要なのは、両方とも「利上げをする側」に立っているという点です。米国は利下げ局面を終え、むしろ追加利上げの是非を議論する段階に入りました。日本は6月に0.75%から1.00%へ引き上げ、1995年以来31年ぶりの水準にあります。

教科書的には、日本が利上げすれば日米金利差は縮まり、円は買われるはずです。ところが現実はその逆を行っています。

金利差は「縮む」のに、円は売られている

まず、市場が織り込んでいる政策金利のパスを見てください。

日米の政策金利パス(市場の織り込みベース) 米=FF金利誘導目標の中央値/日=無担保コールO/N誘導目標 0% 1% 2% 3% 4% 米 3.50–3.75% 日 1.00% 差 2.63pt 差 2.88pt 差 2.63pt 現在 7月会合 9月会合 年末にかけて 年末の金利差は、いまと同じ2.63ptに戻る計算になる。 ※米は9月利上げ、日は10〜12月利上げを仮置きした場合。金利差の拡大は一時的にとどまる。
図1:米が先に上げ、日が後から追う。差は一度開いてから、また閉じる。

米国が9月に利上げすれば金利差は2.88ptまで広がりますが、日本が年内に追いつけば再び2.63pt。年末時点の金利差は、いまと変わらないという絵になります。

それなのに円は40年ぶりの安値圏にある。つまり、いま起きている円安は「金利差の水準」だけでは説明できないということです。ここから先が本題です。

円安を作っている3つの層

① 水準ではなく「ペースの差」が見られている

為替市場が反応するのは、金利差そのものより金利差の変化の速さです。米国は1回で0.25ptを動かす余地を持ち、しかも会合ごとに議論している。一方の日本は、市場調査でも追加利上げの本命が10月・12月とされており、半年に1回程度のペースが既定路線として意識されています。

同じ方向を向いていても、歩幅が違えば距離は開く。実際、日銀が利上げペースの加速に柔軟だとする観測報道が出た日には円が買われる場面がありましたが、買いは続きませんでした。市場は「日銀は動くが、ゆっくりしか動かない」という前提を崩していないわけです。

② 名目金利は上がっても、実質金利はマイナス圏

用語:実質金利

名目の金利から物価上昇率を引いたもの。名目1.0%でも物価が1.5%上がっていれば、実質は約−0.5%。円を持っているだけで購買力が目減りするため、実質金利がマイナスのうちは「円を手放す動機」が残り続けます。

名目は上がった。実質はまだ水面下。 実質=政策金利−消費者物価上昇率(概算) 0% 0.50% 〜25年12月 0.75% 25年12月 1.00% 26年6月〜 名目政策金利 約 −0.5% 実質政策金利 1.00% − 物価1.5% 上流ではすでに再加速:6月の企業物価は前年比+7.1%と3年3か月ぶりの上げ幅。 これが川下の消費者物価に波及すれば、実質金利はいったん下方向へ押し戻される。
図2:3回の利上げを経ても、実質でみた円の金利はまだマイナス圏にある。

日本の消費者物価は落ち着いてきており、5月の総合指数は前年比+1.5%。政策金利1.00%との差し引きで、実質政策金利はおおむね−0.5%前後という計算になります。日銀内部からも「実質金利がきわめて低い水準にあるという表現は修正すべきだ」という意見が出ており、状況は改善方向にはあります。

ただし、まだ水面下です。そして上流ではすでに再加速が始まっています。6月の企業物価指数は前年比+7.1%と、3年3か月ぶりの上げ幅を記録しました。この上昇の主因は原油です。

③ 原油高が「実需の円売り」を生んでいる

3つめが、金利ではなくモノの流れの話です。日本は原油をほぼ全量輸入しています。原油価格が上がれば、輸入代金を支払うために円を売ってドルを買う動きが実際に発生します。これは金利水準に関係なく起きる、投機ではない円売りです。

中東情勢が緊迫し原油が上昇している局面では、この実需の円売りが恒常的に上乗せされます。しかも原油高は米国のインフレ圧力を高め、FRBのタカ派姿勢を支える方向に働く。同じ原油高が、円売り要因とドル買い要因を同時に作っているわけです。

ここが本記事の核心

「日銀が利上げすれば円高」という単線の理解では、いまの相場は読めません。利上げは円高要因として確かに効いていますが、それを上回る速さで、ペース差・実質金利・実需フローの3つが円を押し下げています。原油高がこの3つすべてに触れている点が、今回の局面の厄介なところです。

来週、投資家として見るべき4点

1日銀の展望レポート/物価見通しが上方修正されるかどうか。上方修正は10月利上げの地ならしと受け取られやすい。
2総裁会見のトーン/据え置きは織り込み済みなので、動くとすれば会見。「次回」に言及があるかが最大の変数。
3介入警戒/財務相は「必要があればいつでも断固たる対応」と発言済み。未知の価格帯に入っており、上値の重さは実弾ではなく警戒感が作っている面がある。
4FOMC声明の文言/据え置きでも、声明の書きぶりが変われば9月の織り込みが一段と動く。金利差の絵が変わる。

まとめ

最大の変数

日銀会見での次回示唆と、FOMC声明の文言変更

円安の主因

金利差の水準ではなく、ペース差・実質金利・実需の3層

見落としやすい点

年末の日米金利差は、いまと同じ水準に戻る計算

上流のリスク

企業物価+7.1%。原油次第で実質金利は再びマイナス深化

本記事は公開情報に基づく情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。数値は執筆時点のものです。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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