中央銀行ウォッチ 31/31金融政策・為替
S&P500最高値圏 vs 米10年債5.24%の綱引き ── 10/14の米CPIが日米の金融政策と円相場を動かす連鎖

S&P500最高値圏 vs 米10年債5.24%の綱引き ── 10/14の米CPIが日米の金融政策と円相場を動かす連鎖

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この記事のポイント

  • 10/9のS&P500は7,811.54(+0.6%)と最高値に迫る一方、米10年債利回りは5.24%。株高と高金利が引っ張り合っている。
  • 株を支えるのは「10月の利上げはない」という見方。10月FOMCの利上げ確率は9/28の70.3%から10/8には19.4%まで下がった。ただし12月までの利上げは約81%織り込まれたまま。
  • 10/14(日本時間21:30)の米9月CPIは、10/28のFOMC前で最後の大きな物価統計。強ければ米金利上昇・円安方向、弱ければその逆になりやすい。
  • 日銀の10/29-30会合と合わせて4通りに分けると、日米の政策金利差が縮むのは「FRB据え置き・日銀利上げ」の1通りだけ。
  • S&P500(10/9)7,811.54+0.6%・最高値に迫る
  • 米10年債利回り5.24%10/9
  • 10月FOMCの利上げ確率19.4%9/28は70.3%
  • 次の山場10/14 米CPI日本時間21:30

1何が起きている? ── 最高値圏の株と5.24%の長期金利

10月9日(金)の米国市場は、主要3指数がそろって上昇して1週間を終えました。S&P500は前日比46.18ポイント高の7,811.54(+0.6%)で、3日前の10月6日に付けた最高値にあと一歩のところまで戻しています。ダウは51,654.95(+0.8%)、ナスダック総合は27,366.17(+0.6%)でした。

一方で、同じ日の米10年債利回りは5.24%まで上がっています。普通なら、長期金利が5%を超えると株は割高に見えやすくなり、上値が重くなります。それでも株は最高値圏にいる──この「株高の綱」と「金利の綱」の引っ張り合いが、いまの米国市場の一番の特徴です。

株を押し上げる力と、押し下げる力(10/9時点)株高の綱S&P500 終値10/6の最高値に迫る7,811.54年初来ナスダックは+17.7%+14.1%今週10月利上げ観測が後退+1.2%金利の綱米10年債利回り10/9・日中に何度も振れる5.24%FRBの政策金利9/16に利上げ3.75〜4.00%ブレント原油10/5・前年比+57%約102.6ドル今は株がやや優勢。綱を引き直すのは10/14の米CPI
株を押し上げる力と押し下げる力株高の綱S&P500 終値10/6の最高値に迫る7,811.54年初来ナスダックは+17.7%+14.1%今週10月利上げ観測が後退+1.2%金利の綱米10年債利回り10/9・日中に何度も振れる5.24%FRBの政策金利9/16に利上げ3.75〜4.00%ブレント原油10/5・前年比+57%約102.6ドル今は株がやや優勢綱を引き直すのは10/14の米CPI
図1:株を押し上げる力と押し下げる力。株価・利回りは10/9終値、ブレントは10/5時点(出典:AP、Trading Economics経由の報道、FRB)

この綱引きの決着に大きく効くのが、来週10月14日(水)に発表される米国の9月の消費者物価指数(CPI)です。CPIの結果は、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げの見通しを通じて米金利を動かし、さらに日銀の判断と組み合わさって円相場まで届きます。本記事では、その連鎖を順番に整理します。

2なぜ金利はここまで高い?

金利が高い理由は、大きく3つです。

① FRBが利上げを再開した。FRBは9月16日、政策金利を0.25%引き上げて3.75〜4.00%にしました。利上げは2023年7月以来で、投票した12人全員が賛成しています。10月7日に公表された議事要旨でも、大半の参加者が「年内にもう1回の利上げが適切」と考えていたことが分かりました。

② インフレが下がりきっていない。8月のCPIは前月比+0.4%、前年比+3.4%でした。特にエネルギーが全体を押し上げています。

③ 原油が高い。ブレント原油は10月5日時点で1バレル約102.6ドル、前年より約57%高い水準です。ホルムズ海峡の混乱が続くかどうかが、価格を大きく左右しています(原油高とインフレの関係は原油90ドル時代の記事も参照)。

数字で見ると:米10年債利回り(5.24%)は、政策金利の中央値(3.875%)より約1.36%ポイント高い水準です。市場が「この先も金利は高いまま」「インフレはなかなか下がらない」と見ている表れです。9月下旬には、10年債利回りが2007年以来の高さに迫る場面もありました。

3それでも株が崩れない理由

それでも株が崩れていないのは、「次の利上げはすぐではない」という見方が急速に広がったからです。10月3日に発表された9月の雇用統計が弱く(失業率4.2%)、10月の利上げを急ぐ理由が薄れました。

10/28 FOMCで利上げする確率(市場の織り込み)0%25%50%75%100%9/2870.3%10/521.6%10/819.4%12月までに1回以上の利上げは約81%(10/5時点)
10/28 FOMCの利上げ確率(市場の織り込み)0%25%50%75%100%9/2870.3%10/521.6%10/819.4%12月までに1回以上の利上げは約81%(10/5時点)
図2:10/28のFOMCで利上げする確率(Bloomberg WIRP)。12月までの数字は10/5時点の先物の織り込み(出典:UOB、Admiral Markets)

10月FOMCで利上げする確率は、9月28日の70.3%から10月8日には19.4%まで下がりました。10月FOMC(10月27〜28日)は11月3日の中間選挙の1週間前にあたり、連続利上げは考えにくいという見方もあります。ただし「12月までに1回以上」は約81%織り込まれており、利上げが消えたのではなく、先送りされただけという点は押さえておく必要があります。

注意したい点:上昇は大型株が中心です。今週はS&P500が+1.2%だった一方、小型株のラッセル2000は-0.9%と下げています。高い金利は借入の多い中小型企業ほど重くのしかかるため、株高の裾野は広くありません。

13日(火)からは米大手銀行の7〜9月期決算が始まります。JPモルガンの決算について、オプション市場は±5.2%程度の値動きを織り込んでいます。高金利が銀行の利ざやや貸し倒れにどう出ているかは、景気の強さを測る材料になります。

410/14の米CPIが動かす連鎖

CPIの結果は、次のような順番で円相場や日本株に伝わります。米国側の話(①〜③)と日本側の話(④〜⑤)が、日米の金利差で合流するのがポイントです。

10/14の米CPIから円相場までの連鎖米国側日本側① 10/14 米9月CPI日本時間21:30発表② FRBの利上げ観測10月約19%・12月約81%③ 米金利10年債5.24%④ 10/29-30 日銀会合展望レポートも公表⑤ 国内金利政策金利1.25%から⑥ 日米金利差今は2.75%ポイント⑦ 円相場10/7は158円43〜44銭⑧ 日本株輸出株・銀行株・半導体
10/14の米CPIから円相場までの連鎖米国側日本側① 10/14 米9月CPI日本時間21:30発表② FRBの利上げ観測10月約19%・12月約81%③ 米金利10年債5.24%④ 日銀会合10/29-30・展望レポート⑤ 国内金利政策金利1.25%から⑥ 日米金利差今は2.75%ポイント⑦ 円相場10/7は158円台前半⑧ 日本株輸出株・銀行株・半導体
図3:10/14の米CPIから日本株までの連鎖。確率は10/8・10/5時点の市場の織り込み(出典:Bloomberg WIRP、Admiral Markets、共同通信)

報道によると、9月のCPIは10月28日のFOMCの前に出る最後の大きな物価統計です。弱い雇用統計のあとでCPIが強く出れば、10月の利上げ観測がふたたび高まり、弱ければ次の利上げは12月にずれ込む公算が大きいとみられています。

CPIの結果FRBの見通し米金利ドル円株への影響
予想より強い10月利上げ観測が再燃上昇(5%台がさらに上へ)円安方向米株は割高感が意識されやすい。日本株は輸出株に追い風、ただ米株安の影響も
予想どおり10月見送り・12月利上げ大きくは動かない日銀会合待ち今の綱引きが続く。焦点は日銀と決算へ
予想より弱い12月利上げも後ずれ低下円高方向米株は最高値更新を試しやすい。日本株は円高が輸出株の重しに

なお、CPIの市場予想は発表直前に変わることがあるため、当日は「予想に対して上か下か」を確認してください。特にエネルギーと食品を除いたコアCPIの伸びが、FRBの判断には重く見られます。

5日銀10/29-30と円相場 ── 金利差の4シナリオ

連鎖のもう一方の端にいるのが日銀です。日銀は9月17〜18日の会合で政策金利を1.25%程度に引き上げました。次の会合は10月29〜30日で、経済と物価の見通しをまとめた「展望レポート」も公表されます。

時事通信は10月6日、日銀が物価の基調(一時的な要因を除いた物価の伸び)について「2%程度に到達した」と判断する方向で検討していると報じました。一方、植田総裁の同日のあいさつには利上げを示唆する内容がなかったとの見方が市場で出ており、10月7日の円相場は1ドル=158円43〜44銭と円安方向に動いています。9月28日時点では、OIS(金利スワップ)から計算した10月利上げの確率は約31%でした。

10月の両会合後の日米政策金利差(%ポイント)2.002.252.502.753.003.25A:FRB据え置き・日銀据え置き米4.00% − 日1.25%2.75B:FRB据え置き・日銀利上げ米4.00% − 日1.50%2.50(-0.25)C:FRB利上げ・日銀据え置き米4.25% − 日1.25%3.00(+0.25)D:FRB利上げ・日銀利上げ米4.25% − 日1.50%2.75点線=今の差2.75。縮むのはBだけ
10月の両会合後の日米政策金利差(%ポイント)2.002.252.502.753.003.25A:FRB据え置き・日銀据え置き2.75B:FRB据え置き・日銀利上げ2.50(-0.25)C:FRB利上げ・日銀据え置き3.00(+0.25)D:FRB利上げ・日銀利上げ2.75点線=今の差2.75。縮むのはBだけ
図4:10月の両会合の結果別に見た日米の政策金利差。FRBは誘導目標の上限4.00%、日銀は1.25%から各0.25%の利上げを想定した筆者の計算

FRBと日銀がそれぞれ「据え置き」か「0.25%の利上げ」かで4通りに分けると、日米の金利差が縮むのは「FRB据え置き・日銀利上げ」(B)の1通りだけです。両方が利上げ(D)なら差は変わらず、FRBだけ利上げ(C)なら差は3.00%ポイントまで広がります(9月の両会合でも同じ構図でした。9月の4シナリオの記事)。

ただし、円相場は金利差だけでは決まりません。日銀が利上げしても円安が止まらなかった背景には、財政への不安や貿易などの実需もあります(利上げしても止まらない円安の記事)。ドル円が160円に近づくと、7月末のような為替介入への警戒も強まります。

6来週からのカレンダー

日付イベント見どころ
10/12(月)日本はスポーツの日で休場。米国は債券市場が休み週明けは材料が少なく、株式市場だけが動く
10/13(火)米大手銀行の決算が始まる(JPモルガンなど)利ざや・貸し倒れの引当。高金利の影響が見える
10/14(水)米9月CPI(日本時間21:30)10月FOMC前の最後の大きな物価統計
10/27〜28FOMC(結果は日本時間29日未明)据え置きか利上げか。12月への示唆
10/29〜30日銀会合・展望レポート利上げの有無と「基調物価2%到達」の判断
11/3米中間選挙財政と金利の見通しに影響

東京市場は10月8日の15時時点で日経平均が69,293.71円(前日比-742円)と、上値の重い動きになっていました。9日もOpenAIの売上をめぐる報道でAI関連株が売られ、日経平均は約1%下げています(ソフトバンクGの記事)。3連休明けの13日は、連休中の米株と、14日夜のCPIを前にした様子見が重なりやすい日程です。

7まとめ

  • ▸S&P500は7,811.54と最高値圏。一方で米10年債利回りは5.24%と高く、株と金利が綱引きをしている。
  • ▸株を支えているのは「10月の利上げはない」という見方(確率は70.3%→19.4%)。ただし12月までの利上げは約81%織り込まれたまま。
  • ▸10/14の米CPIが強ければ10月利上げ観測が戻り、米金利上昇・円安方向に。弱ければ逆の動きになりやすい。
  • ▸日銀の10/29-30会合と合わせると、日米の金利差が縮むのは「FRB据え置き・日銀利上げ」の1通りだけ。円相場は日米両方の結果を見るまで方向が決まりにくい。

出典と注意

AP(10/9の米国株終値)、Bloomberg WIRP(UOBのリポート経由)、Admiral Markets、Asiae(FOMC議事要旨)、KuCoin(8月CPI)、Moneymagpie(Trading Economicsのブレント価格)、共同通信(円相場・日経平均)、第一生命経済研究所(日銀のOIS確率・時事通信の報道)、大和総研(日銀9月会合)、ScanX・EarningsWatcher(JPモルガン決算)の各情報。利上げ確率は市場の織り込みで、日々変わります。日米の金利差のシナリオ、利回りと政策金利の差、S&P500の騰落率は筆者が計算したものです。表のシナリオは一般的な傾向を示したもので、実際の値動きを保証するものではありません。記載内容は2026年10月10日時点の情報に基づきます。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。

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この記事を書いた人

睦月六弦

ITエンジニア × 長期投資家

投資歴は約10年。FXや信用取引など短期売買での失敗を経て、現在は個別株とインデックス投資を中心に、長期保有を基本とした運用を続けています。本業のITエンジニアの仕事柄、数字やデータから「なぜそうなるのか」を考えるのが好きです。

「上がる・下がる」だけでなく、なぜ動いたのか、そのニュースが企業や投資にどうつながるのかを、決算・金利・為替などの数字や一次情報をもとに読み解いています。

本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。