出稼ぎのために「ワーホリ」を利用する若者が増えている
令和以降、収入増加を目的に、いわゆる“出稼ぎ”として「ワーキングホリデー制度」を利用する若者が激増しています。
「ワーキング・ホリデー制度(以後、ワーホリ)」の本来の目的は、「休暇や国際交流」です。外務省のホームページによると、下記のように定められています。
ワーキング・ホリデー制度とは、二国・地域間の取決め等に基づき、各々の国・地域が、相手国・地域の青少年に対し、休暇目的の入国および滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度です。各々の国・地域が、その文化や一般的な生活様式を理解する機会を相手国・地域の青少年に対して提供し、二国・地域間の相互理解を深めることを趣旨とします。
出所:外務省「ワーキング・ホリデー制度※1」
なかでも人気のオーストラリア…日本との賃金差は“2倍以上”に
現在は世界で30ヵ国・地域と協定を結んでおり、なかでも渡航先として人気が高いのは、オーストラリアです。留学エージェント「スクールウィズ」が行った「2024年度版 ワーキングホリデーにおける国別、最低賃金月収の実態調査」でも、2位にランクインしています。
日本との地理的な近さや治安のよさ、オーストラリア国内の最低賃金の上昇などから人気を集めています。
コロナ禍を挟んだ約4年間で3割近く「円安・豪ドル高」に振れたこともあり、日本とオーストラリアの月給の差は2倍以上に広がっています。この30年、オーストラリアだけでなく、海外における賃金水準は国によっては2倍から3倍に増えているにもかかわらず、日本人の労働賃金は増えず、長いあいだ停滞しているのが現状です。
“ワーホリ=ガッポリ稼げる”は本当?…行った先で直面する「厳しい現実」
こうしたデータをみると、「日本にいるより海外に行くほうがガッポリ稼げる」と思ってしまいそうですが、実際には「想像と違った」と落胆して帰国の途につく人も多いのが現状です。大学時代の友人の誘いに乗り、オーストラリアへ渡航した27歳のTさんもそのひとりでした……。
難関私大卒→あえて非正規へ…27歳フリーターの“転機”
関西在住のTさん(27歳・女性)は、いわゆるフリーターで、実家暮らしです。難関私大を卒業後、新卒で中小企業に入社したものの、残業が多く、社風も肌に合わなかったことから4年で退職。
その後は、「非正規のほうが自由に働けるし、いろんな経験を積めるかも」と考えたことから、あえて短期間のアルバイトや派遣を転々としていました。月収は19万円ほどです。
そんなある日のこと。大学時代の友人Kさんに連絡をもらったTさんは、SNSで見つけたおしゃれなカフェに出かけました。店に着くと、2人の会話はだんだんとお金の話になっていきます。
Kさん「あれ、ここのランチって前はもうちょっと安かったよね? 最近どこも高いし、こういうカフェにも気安く来られなくなっちゃったよね。給料は上がんないのに」
Tさん「うわほんとだ! まじでお金ないよね、ニュース見ると大企業は賃上げとか言ってるけど、そんなの超一部の話だし。もう日本おわりっしょ……私は自分でこの働き方を選んだから、お金ないのもしょうがないかもだけど」
Kさん「いや、私は転職の勇気がないだけで、Tの生き方けっこう羨ましいって思うことあるよ。あっ、そうだ。そういえばこないだSNSで見たんだけど、T、いっそワーホリ行ってみれば?」
Kさんが見せたスマートフォンの画面をのぞくと、そこには充実した表情でインタビューに答える同世代の若者が映っています。
Kさん「ほとんど貯金なしでオーストラリアに行った人が、3年で年収1,000万円を超えたらしいよ。日本にいたときみたいに普通に働いても、手取り80万円くらいの人もけっこういるっぽい」
Tさん「ほんとだ……日本と向こうでこんなに違うの!?」
Kさん「大学の友達のRもワーホリで出稼ぎに行ったらしいんだけど、あの子は資格があったから、看護師として働いているんだって。年収は3倍になったって聞いたよ。私は結婚しちゃってるから自由に海外に行ったりできないけど、独身でもっと時間があったら行ったのにな~」
Tさん「めっちゃ夢あるね。でもさ、どうせ一部の話じゃない? Rちゃんも資格持ってたからいけたけど、海外って実際仕事あるのかな?」
Kさん「Rから聞いた話だと、オーストラリアは雇用も多いらしいし、働ける業種とか職種も多いんだって。でも、ワーホリって30歳までしかできないらしいんだよね。私はちょっともう厳しいかもって感じだけど、稼ぎながらいましかできないことやりたいって思ったら、ありじゃない?」
興味が湧いたTさんは、帰宅後すぐにワーホリのことを調べてみました。すると、初期費用は[図表3]のようになっています。
正社員時代に比べ収入は少なくなっているものの、実家住まいのTさんは、現在も収入の一部を貯金にあてることができています。
「1年行くとしても手持ちの預金で渡航できるし、ワーホリでいまの倍以上稼げるって考えたら、全然ありだな」
想像していたよりも気軽に利用できると感じたTさんは、すぐにバイト先に退職の旨を伝え、オーストラリアに渡航することを決断しました。
Tさんの心が折れた“予想外”の悲劇
軽い気持ちで渡航を決めたTさんですが、Kさんとともに見た動画サイトで特集されていたのは、ワーホリの“光”の部分。実際にワーホリを利用した人のなかには、100社以上受けても一切受からず、履歴書を片手に職を探しさまようケースも少なくないといいます。
Tさんも、スムーズに仕事が決まらない日々にやきもきしていました。そんななか、苦労の末にとあるレストランが雇ってくれることに。月々の給与は3倍に増え、「こんなにもらえるんだ!」と大喜びのTさんです。
ただし、オーストラリアは物価高。収入は増えたものの、日本にいたころとは違い生活費もかかり、貯蓄に回す余裕はありませんでした。
休暇中にアクティビティを楽しんでいたところ、ビーチの岩につまずき転倒。病院に運ばれた結果、Tさんは足の指の骨が折れており、全治3週間と診断されたのです。
それまで大きなケガや病気にかかったことがなく、「渡航先で病院に行く機会もほとんどないだろう」と保険に最低限の保障しかつけていなかったTさんは、高額な医療費がほぼ全額自己負担に。さらに、治療のため仕事は休まざるをえませんでした。
「もしかしたら解雇されちゃうかも……」「こんなことになるなら、もっと考えておくべきだった」「親に会いたい、友達に会いたい。早く帰りたい……」Tさんは、経済的にも精神的にも追い込まれていきました。号泣するTさんの頭によぎるのは後悔の念ばかりです。
Tさんが想像していなかった「ワーホリ」の“落とし穴”
先述したように、出稼ぎ目的のワーホリ利用者は、SNSなどでも話題になるほど増加の一途をたどっていますが、気軽に行くには注意が必要です。今回、オーストラリアのワーホリ利用でTさんの周囲に起こっていた問題点として挙げられるのは、主に次の2点です。
1.想像以上の物価高
オーストラリアは近年、最低賃金の大幅引き上げによる人件費の増加、ウクライナ戦争に起因する原油・天然ガスの高騰、コロナ禍などを背景にインフレ傾向にあります。特に2022年は大きくインフレが進行し、約6.6%ものインフレ率を記録しました。
こうしたインフレから物価が上がっているほか、「豪ドル高・円安」も物価高の原因のひとつとなっています。
2020年には1豪ドルあたり約73円の為替レートでしたが、2024年6月現在では1豪ドルあたり約96円まで豪ドル高が進行。日本円に直して考えると、2020年には100豪ドルのものを買うのに7,300円で足りたところが、2024年には9,600円必要になったというわけです。
2.高額な医療費
オーストラリアは日本と変わらないほど最先端の医療や衛生環境が整ってはいるものの、医療費自体は日本の数倍かかります。
また、オーストラリアは日本の国民皆保険制度と同じような「メディケア」という公的医療保険制度を採用していますが、対象者は「永住権」を保持しているオーストラリア国民です。つまり、ワーホリで渡航する場合は対象外となります。
ワーホリの際、オーストラリアでの医療費は全額自己負担になるため、万が一に備えて「海外旅行保険への加入を検討する必要があるでしょう。
ワーホリについて調べると、かかる費用や注意点などの欄に必ずといっていいほど記載されているのが「海外留学保険」で、滞在1年あたり平均20~30万円ほどの費用がかかります。
しかし、できるだけ費用を抑えたいと考えたTさんは、最小限の保障しかおさえていませんでした。そうなると、今回のようにケガや病気などで保障金額が足りていなければ、不足分を自分自身で払う必要があります。
こうした事態を防ぐためにも、日本との医療保険制度の違いや実費を事前に把握し、必ず「保障金額が十分か」を確認してから保険に加入するようにしましょう。
お金が絡む“甘い話”には要注意…ワーホリ利用時は慎重に検討を
メディアなどで取り上げられているように、ワーホリ利用などによる海外短期就労者が、高収入を得るパターンがあるのも事実です。
ただ、甘い話につられ、対策や準備をせぬまま利用してしまうと、さまざまなデメリットに直面するうえ、落とし穴にはまってしまう可能性が高まります。今回見てきたもの以外にも、年金や住民税の手続き、確定申告など、渡航前~渡航後に確認し手続きを済ませなければならないことがたくさんあります。
そのため、海外就労に興味があったり希望している場合には、あらかじめ渡航国の経済情勢を調査したり、自身のライフプランや資金計画を立てるなど、入念に準備をしたうえで、渡航目的を明確にし、慎重に検討する必要があるでしょう。
山本 志歩
FP Office株式会社
ワーキング・ホリデー (英語: Working Holiday)とは、2国間の協定に基づいて、青年(18歳~25歳、26歳、29歳または30歳)が異なった文化(相手国)の中で休暇を楽しみながら、その間の滞在資金を補うために一定の就労をすることを認める査証及び出入国管理上の特別な制度である。… 51キロバイト (6,266 語) - 2024年12月30日 (月) 11:09 |
<このニュースへのネットの反応>
で、いろんな経験を積んだ事になってるの?
社会以前に大学舐めすぎよ
難関私大出てるのにまともに事前調査をしないって相当頭緩そう
難関私大卒の割に情報収集を含む準備も計画性もないんですね。
日本終わった要素は何処だ?
円安は貯金や日本への送金があって初めて意味があるってのに何アクティビティとか言って遊んでるの?日本のレストランで働く外国人がなぜオーストラリアを選ばなかったか考えないの?
日本終わりっしょとか考えてたら実態を知って後悔したって話やろ、ハワイとかでも時給いいけど生活費も半端ねえからな、インフレに合わせて給料上がってるだけである
学歴だけを注視して学習能力が成長しなかった欠陥。
Tさんが典型的なアホで安心した
終わってるのは日本じゃなくて・・・
ようは友達に稼げるって言われたからオーストラリアに行ったら全然就職できなかった上に保険ケチったせいで高額治療費払う羽目になったっていうあるあるの話だな。ずんだもん動画で量産されてそうな陳腐な内容。
なんだかんだ言っても日本はまだ弱者に優しい(甘い)国だよ。終わったとか言ってる人間の大半は本人が終わってるってだけで。
個人の問題であって、日本関係ない