半導体株はなぜ日によって逆向きに動くのか 物語で値段が決まる株
9月14日からの4営業日、日経平均はほぼ横ばいだった。ところがその中で半導体関連は、日によって上下が入れ替わり、同じ日でも銘柄によって逆向きに動いている。9月17日には米半導体株高を受けて一時700円超上げて始まりながら、主力の半導体銘柄だけが下げて引けた。これは「半導体」という括りが値動きの単位として粗すぎることを示している。
2026年9月18日|株価は9月17日終値まで|出所:各社報道、東京証券取引所
19月11日から17日までの4営業日で、日経平均は124.91円(0.2%)とほぼ動いていない。その水面下で半導体関連は日ごとに向きを変え、同じ日に上がる銘柄と下がる銘柄が同居していた。
29月17日が典型だった。米SOX指数の上昇を受けて日経平均は一時720.58円高で始まりながら、アドバンテスト、東京エレクトロン、キオクシアHD、TDK、イビデンは下げて引けた。指数は213.25円高で終え、33業種のうち28業種が上昇している。
3「半導体株」を一つのテーマとして売買すると、この動きは読めない。製造装置・メモリ・電線部材の3つは、値段を決めている材料がそれぞれ違う。
1指数は動いていないのに、中身は動いていた
まず4営業日を並べる。日経平均の騰落率と、半導体主要銘柄の向きを同じ図に置いた。
指数だけを見れば、この4営業日はほとんど何も起きていない。9/11終値64,011.34円に対して9/17終値は64,136.25円、差し引き124.91円(0.2%)だ。
ところが中身は静かではなかった。アドバンテストと東京エレクトロンは9/14と9/15に下げ、9/16に買い戻され、9/17にまた下げた。一方キオクシアHDは9/15に装置2銘柄と逆に上昇し、9/16には装置2銘柄が上げるなかで下げている。同じ「半導体関連」でありながら、日によって向きが揃わない。
9月17日の動きがとりわけ示唆的だった。前日の米国市場ではダウが-1.21%、ナスダックが-0.78%と下げたものの、SOX指数は上昇していた。これを受けて東京市場は買いが先行し、日経平均は一時+720.58円(+1.13%)まで上げている。ところが引けは+213.25円。寄り付きの上げ幅の70.4%を日中に失った計算になる。
そして下げて引けたのが、アドバンテスト、東京エレクトロン、TDK、イビデン、キオクシアHDだった。東証プライムでは1,200を超える銘柄が上昇し、33業種のうち28業種が上げている。指数も市場全体も上がったなかで、半導体だけが取り残された。
※図1に載せたのは、4営業日すべてについて方向が報じられた3銘柄に限っている。フジクラ、村田製作所、TDK、イビデンなども日によって向きが入れ替わったが、全日の記載が揃わないため図では省いた。
23つの型に分けると動きが読める
なぜこうなるのか。答えは単純で、「半導体関連」が値動きの単位として粗すぎるからだ。同じ言葉で呼ばれている銘柄群の中に、値段を決めている材料が違う3つの型が混ざっている。
A:製造装置型 アドバンテスト、東京エレクトロンなど。顧客である半導体メーカーが翌年以降にいくら設備投資するかで値段が決まる。したがってAI投資の減速論に最も素直に反応する。9月12日にAnthropicのアモデイCEOが開発ペースの調整を訴え、OpenAIのアルトマンCEOが年内上場を見送ると表明した局面で、真っ先に売られたのがこの型だった。
B:メモリ型 キオクシアHD、SUMCOなど。こちらを動かすのは設備投資計画ではなく、NANDやDRAMの現物価格と各社の在庫水準だ。メモリは需給サイクルが独自に回っており、AIの話題とは別の時間軸で価格が動く。9/15にキオクシアHDが装置株と逆に上昇したのは、この2つのサイクルが別々に動いている証拠といえる。
C:電線・部材型 フジクラ、古河電工、イビデン、TDK、村田製作所など。この型が反応するのは将来の計画ではなく、いま建っている設備に向けた受注残と納入実績だ。データセンターの着工や電力インフラ投資のニュースで動きやすい。この4営業日では銘柄ごとに向きが割れており、型の中でもさらに個別性が強いことがうかがえる。
| 型 | 値段を決めるもの | 反応しやすいニュース | 反応しにくいニュース |
|---|---|---|---|
| A 製造装置 | 顧客の設備投資計画 | AI投資の加速・減速、データセンター建設計画 | 足元のメモリ価格 |
| B メモリ | メモリ市況と在庫 | NAND・DRAM価格、減産や増産の発表 | 数年先の投資計画の増減 |
| C 電線・部材 | 受注残と納入の実績 | 着工・稼働、電力や通信のインフラ投資 | 開発ペースを巡る議論そのもの |
実務上の意味:保有している半導体関連がどの型かを先に決めておくと、ニュースが出たときに反応すべきかどうかを判断できる。AI開発の減速論はAには効くが、Bにはほとんど効かない。
3物語で決まる株と、数字で決まる株
ここまでの話は「値段が何で決まっているか」に尽きる。半導体株の場合、その正体は将来の需要についての物語だ。
製造装置型の株価は、顧客がこれから何年かけていくら投資するかという見通しを織り込んでいる。その見通しは決算書に書かれていないし、確定もしていない。だから経営者の発言一つ、政策の方向一つで簡単に書き換わる。9月に入ってからの値動きは、業績が変わったからではなく物語が揺れたから生じたものだ。
この性質は、同じ週に起きていたもう一つの出来事と対照的だった。9月14日の取引終了後、光通信と投資ファンド2社がレオパレス21に対するTOBを発表し、同社の株価は連日ストップ高で買付価格1,000円へ向かって収束していった。こちらは物語ではなく、買付価格という確定した数字が値段を決めている。相場全体が動いても、AI開発の議論が進んでも、その株価はほとんど反応しない。
| 半導体関連株 | TOB発表後の銘柄 | |
|---|---|---|
| 値段を決めるもの | 将来の需要についての見通し | 買付価格と、成立する確率 |
| 情報が更新される頻度 | 毎日。発言や指標のたびに書き換わる | 案件の節目のみ。応募状況や手続きの進捗 |
| 上値のめど | なし | 買付価格が事実上の上限 |
| 相場との連動 | 強い。ただし型によって向きが分かれる | ほとんどない |
| 投資家がやること | 物語の前提が崩れていないかを確かめ続ける | 応募するか市場で売るかを決める |
同じ株式市場で売買されていても、値段の決まり方はこれだけ違う。自分が持っている銘柄がどちらの型かを意識していないと、見るべき情報を間違える。
4目先の材料を型ごとに割り振る
最後に、目先の材料を整理しておく。
金融政策は9月16日のFOMCで動いた。FRBは0.25%の利上げを決め、FF金利の誘導目標は3.75〜4.00%となった。投票権を持つ12人全員が賛成し、政策金利見通しの中央値は2026年末で4.1%と、6月時点の3.8%から引き上げられている。金利上昇は、将来の利益を現在価値に割り引く際の分母を大きくするため、成長期待で買われている銘柄ほど逆風になる。製造装置型がこれに最も当たりやすい。
日銀の金融政策決定会合は9月17〜18日に開かれ、結果は18日に公表される。本記事は公表前に書いている。
個別要因では、キオクシアHDの株式分割が10月1日に効力を発生する。1株を3株に分割するもので、投資単位は単純計算で3分の1になる。報道時点の株価水準58,050円で考えると、100株あたり約580.5万円だった投資額が、分割後は同じ価値で約193.5万円相当に細分化される。
ただし分割は値段の決まり方を変えない。株数が増えた分だけ1株あたりの価格が下がるだけで、企業価値も持ち分比率もPERやPBRといった指標も変わらない。個人投資家が買いやすくなるという需給面の効果はあるが、それは分割そのものが価値を生んだことを意味しない。
※権利付最終日および基準日については会社の開示をご確認ください。株価水準は報道時点のものです。
| 見るもの | どの型に効くか | いつ |
|---|---|---|
| 日銀の決定と総裁会見 | 全般。金利上昇は成長期待銘柄に逆風 | 9月18日 |
| データセンター向けの受注開示 | C 電線・部材型に直接 | 開示のたび |
| NAND・DRAMの価格動向 | B メモリ型に直接 | 月次の市況 |
| 顧客の設備投資計画の修正 | A 製造装置型に直接 | 四半期決算 |
4営業日で日経平均はほぼ横ばいだったが、半導体関連は日ごとに向きを変えた。指数を見ても保有銘柄の状況は分からない。
「半導体関連」は値動きの単位として粗すぎる。製造装置・メモリ・電線部材の3つは値段を決めている材料が違い、同じニュースが逆向きに効くことがある。
半導体株の値段は将来の需要についての物語で決まる。物語は毎日書き換わるので、前提が崩れていないかを確かめ続ける必要がある。
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本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

