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値段の決まり方AI熱狂の光と影2026年相場

半導体株はなぜ日によって逆向きに動くのか 物語で値段が決まる株

9月14日からの4営業日、日経平均はほぼ横ばいだった。ところがその中で半導体関連は、日によって上下が入れ替わり、同じ日でも銘柄によって逆向きに動いている。9月17日には米半導体株高を受けて一時700円超上げて始まりながら、主力の半導体銘柄だけが下げて引けた。これは「半導体」という括りが値動きの単位として粗すぎることを示している。

2026年9月18日|株価は9月17日終値まで|出所:各社報道、東京証券取引所

4営業日の日経平均+0.20%9/11終値 64,011.34円 → 9/17終値 64,136.25円
9/17の寄り付き+720.58円米SOX指数高を受けて買い先行
9/17の終値+213.25円上げ幅の70.4%を日中に失った
9/17に上昇した業種28 / 33業種全体の84.8%。半導体は下落側
9/14のキオクシアHD-6.37%同日SOX指数は-6.00%
FF金利の誘導目標3.75〜4.00%9/16のFOMCで0.25%引き上げ
この記事の要点

19月11日から17日までの4営業日で、日経平均は124.91円(0.2%)とほぼ動いていない。その水面下で半導体関連は日ごとに向きを変え、同じ日に上がる銘柄と下がる銘柄が同居していた。

29月17日が典型だった。米SOX指数の上昇を受けて日経平均は一時720.58円高で始まりながら、アドバンテスト、東京エレクトロン、キオクシアHD、TDK、イビデンは下げて引けた。指数は213.25円高で終え、33業種のうち28業種が上昇している。

3「半導体株」を一つのテーマとして売買すると、この動きは読めない。製造装置・メモリ・電線部材の3つは、値段を決めている材料がそれぞれ違う。

1指数は動いていないのに、中身は動いていた

まず4営業日を並べる。日経平均の騰落率と、半導体主要銘柄の向きを同じ図に置いた。

日経平均と半導体主要銘柄の向き(9月14〜17日)9/149/159/169/17日経平均終値の騰落率-0.81%-0.01%+0.69%+0.33%アドバンテスト製造装置東京エレクトロン製造装置キオクシアHDメモリ↑は上昇、↓は下落4営業日を通した日経平均+124.91円(+0.20%)とほぼ横ばい日経平均と半導体の向き2026年9月14〜17日9/149/159/169/17日経平均終値の騰落率-0.81-0.01+0.69+0.33アドバンテスト製造装置東京エレクトロン製造装置キオクシアHDメモリ↑は上昇、↓は下落4営業日を通した日経平均+124.91円(+0.20%)とほぼ横ばい
図1:日経平均の終値騰落率と、半導体主要銘柄の当日の方向。方向は各日の市況報道で値上がり・値下がりのいずれに分類されたかによる。出所:各社報道、市場公表値。

指数だけを見れば、この4営業日はほとんど何も起きていない。9/11終値64,011.34円に対して9/17終値は64,136.25円、差し引き124.91円(0.2%)だ。

ところが中身は静かではなかった。アドバンテストと東京エレクトロンは9/14と9/15に下げ、9/16に買い戻され、9/17にまた下げた。一方キオクシアHDは9/15に装置2銘柄と逆に上昇し、9/16には装置2銘柄が上げるなかで下げている。同じ「半導体関連」でありながら、日によって向きが揃わない。

9月17日の動きがとりわけ示唆的だった。前日の米国市場ではダウが-1.21%、ナスダックが-0.78%と下げたものの、SOX指数は上昇していた。これを受けて東京市場は買いが先行し、日経平均は一時+720.58円(+1.13%)まで上げている。ところが引けは+213.25円。寄り付きの上げ幅の70.4%を日中に失った計算になる。

そして下げて引けたのが、アドバンテスト、東京エレクトロン、TDK、イビデン、キオクシアHDだった。東証プライムでは1,200を超える銘柄が上昇し、33業種のうち28業種が上げている。指数も市場全体も上がったなかで、半導体だけが取り残された。

※図1に載せたのは、4営業日すべてについて方向が報じられた3銘柄に限っている。フジクラ、村田製作所、TDK、イビデンなども日によって向きが入れ替わったが、全日の記載が揃わないため図では省いた。

23つの型に分けると動きが読める

なぜこうなるのか。答えは単純で、「半導体関連」が値動きの単位として粗すぎるからだ。同じ言葉で呼ばれている銘柄群の中に、値段を決めている材料が違う3つの型が混ざっている。

半導体関連を3つの型に分けるA製造装置型主な銘柄アドバンテスト、東京エレクトロン、SCREEN動かす主因顧客の設備投資計画反応する材料AI投資の加速・減速論データセンター建設計画この4日間減速論に最も素直に反応9/16だけ買い戻しBメモリ型主な銘柄キオクシアHD、SUMCO動かす主因メモリ市況と在庫反応する材料メモリ価格の騰落減産・増産の発表この4日間9/15は装置株と逆に上昇サイクルが別に動く証拠C電線・部材型主な銘柄フジクラ、古河電工、イビデン、TDK、村田製作所動かす主因データセンターの実需反応する材料着工・稼働のニュース電力・通信インフラ投資この4日間日によって向きが割れた銘柄ごとの個別性が強い半導体関連を3つの型に分けるA製造装置型顧客の設備投資計画主な銘柄アドバンテスト、東京エレクトロン、SCREEN反応する材料AI投資の加速・減速論データセンター建設計画この4日間減速論に最も素直に反応9/16だけ買い戻しBメモリ型メモリ市況と在庫主な銘柄キオクシアHD、SUMCO反応する材料メモリ価格の騰落減産・増産の発表この4日間9/15は装置株と逆に上昇サイクルが別に動く証拠C電線・部材型データセンターの実需主な銘柄フジクラ、古河電工、イビデン、TDK、村田製作所反応する材料着工・稼働のニュース電力・通信インフラ投資この4日間日によって向きが割れた銘柄ごとの個別性が強い
図2:半導体関連を値動きの決まり方で3つに分ける。銘柄の分類は代表例であり、実際には複数の性格を併せ持つ企業もある。

A:製造装置型 アドバンテスト、東京エレクトロンなど。顧客である半導体メーカーが翌年以降にいくら設備投資するかで値段が決まる。したがってAI投資の減速論に最も素直に反応する。9月12日にAnthropicのアモデイCEOが開発ペースの調整を訴え、OpenAIのアルトマンCEOが年内上場を見送ると表明した局面で、真っ先に売られたのがこの型だった。

B:メモリ型 キオクシアHD、SUMCOなど。こちらを動かすのは設備投資計画ではなく、NANDやDRAMの現物価格と各社の在庫水準だ。メモリは需給サイクルが独自に回っており、AIの話題とは別の時間軸で価格が動く。9/15にキオクシアHDが装置株と逆に上昇したのは、この2つのサイクルが別々に動いている証拠といえる。

C:電線・部材型 フジクラ、古河電工、イビデン、TDK、村田製作所など。この型が反応するのは将来の計画ではなく、いま建っている設備に向けた受注残と納入実績だ。データセンターの着工や電力インフラ投資のニュースで動きやすい。この4営業日では銘柄ごとに向きが割れており、型の中でもさらに個別性が強いことがうかがえる。

型値段を決めるもの反応しやすいニュース反応しにくいニュース
A 製造装置顧客の設備投資計画AI投資の加速・減速、データセンター建設計画足元のメモリ価格
B メモリメモリ市況と在庫NAND・DRAM価格、減産や増産の発表数年先の投資計画の増減
C 電線・部材受注残と納入の実績着工・稼働、電力や通信のインフラ投資開発ペースを巡る議論そのもの

実務上の意味:保有している半導体関連がどの型かを先に決めておくと、ニュースが出たときに反応すべきかどうかを判断できる。AI開発の減速論はAには効くが、Bにはほとんど効かない。

3物語で決まる株と、数字で決まる株

ここまでの話は「値段が何で決まっているか」に尽きる。半導体株の場合、その正体は将来の需要についての物語だ。

製造装置型の株価は、顧客がこれから何年かけていくら投資するかという見通しを織り込んでいる。その見通しは決算書に書かれていないし、確定もしていない。だから経営者の発言一つ、政策の方向一つで簡単に書き換わる。9月に入ってからの値動きは、業績が変わったからではなく物語が揺れたから生じたものだ。

この性質は、同じ週に起きていたもう一つの出来事と対照的だった。9月14日の取引終了後、光通信と投資ファンド2社がレオパレス21に対するTOBを発表し、同社の株価は連日ストップ高で買付価格1,000円へ向かって収束していった。こちらは物語ではなく、買付価格という確定した数字が値段を決めている。相場全体が動いても、AI開発の議論が進んでも、その株価はほとんど反応しない。

半導体関連株TOB発表後の銘柄
値段を決めるもの将来の需要についての見通し買付価格と、成立する確率
情報が更新される頻度毎日。発言や指標のたびに書き換わる案件の節目のみ。応募状況や手続きの進捗
上値のめどなし買付価格が事実上の上限
相場との連動強い。ただし型によって向きが分かれるほとんどない
投資家がやること物語の前提が崩れていないかを確かめ続ける応募するか市場で売るかを決める

同じ株式市場で売買されていても、値段の決まり方はこれだけ違う。自分が持っている銘柄がどちらの型かを意識していないと、見るべき情報を間違える。

4目先の材料を型ごとに割り振る

最後に、目先の材料を整理しておく。

金融政策は9月16日のFOMCで動いた。FRBは0.25%の利上げを決め、FF金利の誘導目標は3.75〜4.00%となった。投票権を持つ12人全員が賛成し、政策金利見通しの中央値は2026年末で4.1%と、6月時点の3.8%から引き上げられている。金利上昇は、将来の利益を現在価値に割り引く際の分母を大きくするため、成長期待で買われている銘柄ほど逆風になる。製造装置型がこれに最も当たりやすい。

日銀の金融政策決定会合は9月17〜18日に開かれ、結果は18日に公表される。本記事は公表前に書いている。

個別要因では、キオクシアHDの株式分割が10月1日に効力を発生する。1株を3株に分割するもので、投資単位は単純計算で3分の1になる。報道時点の株価水準58,050円で考えると、100株あたり約580.5万円だった投資額が、分割後は同じ価値で約193.5万円相当に細分化される。

ただし分割は値段の決まり方を変えない。株数が増えた分だけ1株あたりの価格が下がるだけで、企業価値も持ち分比率もPERやPBRといった指標も変わらない。個人投資家が買いやすくなるという需給面の効果はあるが、それは分割そのものが価値を生んだことを意味しない。

※権利付最終日および基準日については会社の開示をご確認ください。株価水準は報道時点のものです。

見るものどの型に効くかいつ
日銀の決定と総裁会見全般。金利上昇は成長期待銘柄に逆風9月18日
データセンター向けの受注開示C 電線・部材型に直接開示のたび
NAND・DRAMの価格動向B メモリ型に直接月次の市況
顧客の設備投資計画の修正A 製造装置型に直接四半期決算
この記事の持ち帰り

4営業日で日経平均はほぼ横ばいだったが、半導体関連は日ごとに向きを変えた。指数を見ても保有銘柄の状況は分からない。

「半導体関連」は値動きの単位として粗すぎる。製造装置・メモリ・電線部材の3つは値段を決めている材料が違い、同じニュースが逆向きに効くことがある。

半導体株の値段は将来の需要についての物語で決まる。物語は毎日書き換わるので、前提が崩れていないかを確かめ続ける必要がある。

本記事は2026年9月18日時点で公表されている情報にもとづく市況の整理であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。株価は2026年9月17日の終値までを使用しています。銘柄の3類型は理解のための整理であり、実際には複数の性格を併せ持つ企業もあります。図1の方向は各日の市況報道における値上がり・値下がりの記載にもとづくもので、騰落率そのものではありません。株式分割の権利付最終日および基準日、分割後の株価水準については会社の開示をご確認ください。日銀の金融政策決定会合の結果は本記事の執筆時点で公表されていません。投資に関する最終的な判断はご自身の責任で行ってください。筆者は本記事で言及した個別銘柄について、記事公開時点で売買の予定を有していません。

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この記事を書いた人

睦月六弦

ITエンジニア × 長期投資家

投資歴は約10年。FXや信用取引など短期売買での失敗を経て、現在は個別株とインデックス投資を中心に、長期保有を基本とした運用を続けています。本業のITエンジニアの仕事柄、数字やデータから「なぜそうなるのか」を考えるのが好きです。

「上がる・下がる」だけでなく、なぜ動いたのか、そのニュースが企業や投資にどうつながるのかを、決算・金利・為替などの数字や一次情報をもとに読み解いています。

本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。