トランプ氏がイラン提案拒否、ブレント108ドル台へ|原油高が「金利」経由で株価に届く仕組みとシナリオ
トランプ氏がイラン提案を拒否、ブレント108ドル台へ――原油高は「金利」を通って株価に届く
「7日以内に海峡を再開する」というイランの条件付き提案を、トランプ米大統領が週末に拒否しました。週明けの原油は約4%高。同じ日、日本の2年債利回りは31年半ぶりの水準に上がり、日経平均は6日ぶりに反落しました。原油・金利・株価が一本の線でつながった一日を、図解とシナリオで整理します。
- 1イランの「7日で海峡再開」案をトランプ氏が拒否。一方で「今週は協議が再開する」とも発言しており、交渉の扉は閉じていません。
- 2原油高はインフレ懸念を通じて日米の金利を押し上げ、株価の「割高感」を強めました。今日の日本株安の主因は、原油そのものより金利です。
- 3今後は「協議再開・膠着・攻撃再開」の3つに分かれます。11月3日の米中間選挙が時間軸の節目です。
1何が起きたか――「7日で海峡再開」案を拒否
イランのアラグチ外相は、国連総会にあわせて米国に新しい提案を示しました。中身は「条件が満たされれば、7日後にホルムズ海峡を開き、核協議を再開する」というものです。条件は、米国によるイラン港湾の海上封鎖の解除、原油販売への制裁の免除、凍結資産の解放、そしてレバノンを含む停戦です。
前週末25日の米国市場は、この提案を「交渉が前に進む」サインと受け止めました。原油が下がり、米長期金利も下がって、NYダウは478ドル高で取引を終えています。
ところが26日(米国時間)、トランプ大統領はこの提案を拒否しました。イランは「負けているから取引をしたがっている」という趣旨の発言です。さらに米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、トランプ氏が「11月の中間選挙のあとに対イラン攻撃が再開される」との見通しを側近に伝えたと報じました。
ただし、話はそれで終わりません。トランプ氏は27日、米メディアの取材に「今週、協議が再開すると思う」と話しています。イラン側も「仲介国から正式な回答が届くのを待っている」との立場です。交渉は壊れたのではなく、条件の綱引きが続いている、と読むのが実態に近いでしょう。
- 海峡の通過数:9/21〜27の1週間で132回(前週116回から+13.8%)。回復は始まっていますが、戦争前の流れにはほど遠い水準です。
- 紅海の出口(バブ・エル・マンデブ海峡)でも、フーシ派がサウジ船籍のタンカーを狙っています。ホルムズ以外にも供給の弱点があります。
2原油はいまどこにいるのか――開戦前比+49.7%
週明け28日、北海ブレント先物は一時108.48ドルまで上がりました。前週末の終値(約104.3ドル)から約4%高く、9月15日以来の高値です。米国のWTI先物も96.16ドルまで上がっています。9月の1か月では約18%の上昇です。
今年の節目を並べると、いまの位置がよくわかります(図1)。米国とイスラエルがイランを攻撃する前日の2月27日は72.48ドル。4月末には一時126ドルまで上がり、6月には停戦への期待で73.74ドルまで戻りました。そこから再び上がり、いまは開戦前より49.7%高く、6月の安値から47.1%上にいます。4月の高値までは、あと16.2%です。
3原油高が株価に届くまで――カギは「金利」
「原油が上がると、なぜ日本株が下がるのか」。今日の相場は、その答えを教えてくれます。道すじは図2のとおりです。
まず、原油高はガソリンや電気代を通じて物価を押し上げます。すると市場は「中央銀行は利上げを続けるしかない」と考えます。FRBは9月に利上げしたばかりですが、市場は10月の追加利上げを66%の確率で織り込んでいます。
日本にはもう一本の道があります。米国の政府関係者から円安の修正を求める発言が相次ぎ、日銀の早期利上げ観測が強まりました。日銀は9月に政策金利を1.25%へ上げたばかりです。そのため、政策金利の見通しを映しやすい2年債が売られ、利回りは一時1.975%と1995年以来の高さになりました。5年債の利回りは過去最高を更新しています。
| 指標 | 9/28の水準 | ポイント |
|---|---|---|
| 米2年債 | 4.90% | 前日比+0.05%ポイント、利上げ観測を反映 |
| 米10年債 | 5.22% | 2007年以来の高水準 |
| 日本2年債(一時) | 1.975% | 1995年以来の高さ |
| 日本5年債 | 2.43% | 過去最高を更新 |
| 日本10年債(一時) | 3.095% | 節目の3%を上回って推移 |
| 日米10年金利差 | 2.125%pt | 米10年−日10年(筆者計算) |
出所:日本経済新聞、Bloomberg、Trading Economicsの報道・データをもとに筆者作成
金利が上がると、株は相対的に「割高」に見えます。安全な国債でそれなりの利回りが得られるなら、値動きの大きい株を高い値段で持つ理由が弱まるからです。日経平均は前週末までの5日間で3000円近く上がっていたこともあり、486.58円安(−0.73%)の65,877.62円と安値で取引を終えました。
4シナリオ分岐――協議再開か、膠着か、攻撃再開か
今後の展開は、大きく3つに分けて考えられます(図3)。どれが起きるかを当てるより、どのサインが出たらどのシナリオに近づいたと判断するかを決めておくことが大切です。
シナリオA:協議再開から海峡再開へ
先週末の値動きが、このシナリオの予告編です。協議が進むと見られただけで原油が下がり、金利も下がり、米国株は上がりました。仲介国を通じた正式な回答や、海峡の通過数の増加が続けば、このシナリオに近づきます。
シナリオB:協議は続くが膠着
いちばん起こりやすいのは、このシナリオかもしれません。両者とも交渉の扉は開いていますが、「どちらが先に譲るか」で大きく離れています。原油は高止まりし、金利も下がりにくく、株価指数は上値が重くなります。
シナリオC:中間選挙後に攻撃再開
WSJの報道どおりに事態が進むケースです。エネルギー市場では、中間選挙後に米イランの戦闘が再開する「現実の危険」を織り込み始めているとの声も出ています。原油が4月の高値(126ドル)に近づくようなら、インフレ懸念による金利上昇と、リスク回避による金利低下が綱引きになり、株式市場は大きく揺れやすくなります。
5個人投資家のチェックポイント
- 今週の協議再開の有無:トランプ氏自身が「今週」と言っています。再開できなければ、シナリオBからCへの移行を警戒します。
- 海峡の週次通過数:132回からさらに増えるか。言葉より実際の船の動きのほうが正直です。
- 日米の2年債利回り:米4.90%、日1.975%。原油高が「利上げ観測」に変わっているかを確かめる、いちばん早い指標です。
- 10月2日の米雇用統計:強い数字が出ると、原油高と合わせて10月利上げ観測がさらに強まります。
- 11月3日の米中間選挙:WSJ報道が示す「選挙後」という時間軸の節目です。
トランプ氏の提案拒否で、原油は開戦前より49.7%高い水準に戻りました。ただ、日本株を実際に押し下げたのは、原油高がもたらした金利の上昇です。日本では円安と日銀の利上げ観測が重なり、金利上昇の圧力が二重にかかっています。
交渉の扉はまだ開いています。「協議が再開するか」「船が増えるか」「2年債が止まるか」。この3つを毎週確かめることが、地政学リスクに振り回されないいちばんの近道です。
※本記事は2026年9月28日時点の公開情報をもとにした情報提供を目的としており、特定の銘柄・金融商品の売買を勧めるものではありません。数値は報道時点のもので、その後変わる可能性があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
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