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米・イラン核合意交渉が動き出した — 原油安・地政学リスク後退は「追い風」か「罠」か

2026年2月18日
投資情報・マーケット分析


はじめに:今、世界の目はジュネーブに向いている

2026年2月17日(現地時間)、スイス・ジュネーブで米国とイランによる核協議の第2ラウンドが開催された。イランのアラグチ外相は会談後、「指針となる原則について幅広い合意に達した。今後は合意文書の草案作りに向けて交渉を進める」と国営テレビに語り、"前向きな進展"を強調した。

これを受けて市場は即座に反応した。原油市場ではWTI先物が2週間ぶりの安値を記録。本日(2月18日)もWTIは約62ドル台で推移しており、地政学リスクプレミアムの剥落が続いている。

このニュースを投資家はどう読み解けばいいのか。シナリオ別に整理していきたい。


交渉の現状:「合意への道筋」は見えたが、着地はまだ遠い

まず現状を整理しよう。

今回の協議は、オマーンの仲介のもとで行われた間接交渉だ。米国側からはトランプ大統領の特使であるスティーブ・ウィトコフとジャレッド・クシュナーが出席。2週間後に次のラウンドを控えており、イラン側が残された論点に対する具体的な提案を持ち帰る形で閉会した。

ただし、楽観は禁物だ。「合意した」のはあくまでも「交渉の指針」であって、最終合意の内容ではない。核濃縮の継続問題という根本的な争点は依然未解決のままで、交渉の最中にもイランの革命防衛隊はホルムズ海峡で軍事演習を実施し、米国は空母打撃群を2隻中東に展開している。「外交の並走」と「軍事的圧力」が同時進行するという、緊張感に満ちた状況は変わっていない。


原油市場への影響:「リスクプレミアム剥落」と「供給増懸念」の二重圧力

価格の動き

今年1月、米・イランの軍事衝突リスクが高まった局面では、原油価格は一時13%以上急騰した。今回の交渉進展でそのリスクプレミアムが剥落しつつある。

現時点のベンチマーク価格はブレント原油が67ドル台、WTIが62ドル台。アナリストの試算では、現在の価格には2〜3ドル程度の地政学プレミアムが残存しているとされており、合意が最終的に成立した場合にはさらなる下落余地があるとみられている。

制裁解除による「供給増」シナリオ

核合意が成立した場合、対イラン制裁の段階的解除に伴ってイラン産原油が国際市場に戻ってくる可能性がある。現在、イランの原油輸出の80〜90%は中国向けで、「ダークフリート」と呼ばれる抜け道ルートを経由している。制裁解除後はこれが表の市場に流れ込む形となる。

供給面で見ると、イランとベネズエラ双方の制裁緩和が重なった場合、合計で日量150〜180万バレル規模の供給増になるとの試算もある。現在のグローバルな供給過剰分と比較して小さくない数字だ。

OPEC+の立場

OPEC+は2026年第1四半期まで増産を見送ることを既に決定している。イランが正式に制裁解除されれば、OPECの生産割当問題も再燃しかねない。サウジアラビアなど湾岸産油国の思惑が、今後の原油価格の行方を左右する変数として浮上してくる。


投資への示唆:シナリオ別に整理する

以下の3つのシナリオで考えると整理しやすい。

シナリオ①:交渉が「合意」に向けて着実に進展する場合

原油価格:下落圧力
供給増期待により、WTIは60ドルを下回る可能性もある。逆に、原油コストの低下は製造業・運輸・石油化学などのコスト構造を改善する。

株式市場:全般的に追い風
地政学リスク後退は、特に中東リスクに敏感な輸送・航空・素材セクターにポジティブ。また、インフレ再燃への懸念が後退することで、長期金利が低下しやすくなり、グロース株の評価改善につながりうる。

注目セクター:

  • 航空・海運(燃料コスト低下)
  • 化学・素材(ナフサ価格低下の恩恵)
  • 旅行・観光(地政学リスク低下による需要回復)

シナリオ②:交渉が「決裂」または「長期化」する場合

原油価格:急騰リスク
交渉破断となれば、軍事衝突リスクが一気に高まる。ホルムズ海峡が封鎖された場合、世界の海上石油輸送の約20%が影響を受ける。市場の試算では、ブレント原油が2026年末までに90ドル超に跳ね上がる可能性も否定できない。

注目セクター:

  • 石油メジャー・エネルギーETF(原油急騰の直接受益)
  • 防衛関連(地政学リスク高まりによる需要拡大)
  • 金・ゴールドETF(リスク回避の逃避先)

シナリオ③:「合意はするが実施は遅れる」という現実的な中間シナリオ

最も蓋然性が高いとみられるのが、このシナリオだ。交渉は続くが具体的な制裁解除には時間がかかり、原油は60〜70ドルのレンジで上下する展開。軍事的緊張は表面上和らぐが、根本的な対立は残る。

この場合、一方向に大きく張るより、原油ボラティリティを活用したポジションや、エネルギー関連株の選別投資が有効になってくる。


日本株への波及

日本はエネルギーの約90%を輸入に頼っており、原油価格の動向は企業収益に直接影響する。

原油安が追い風になるセクター: エネルギー多消費型の製造業(素材・化学・鉄鋼)、運輸(航空・海運・物流)、そして消費者の可処分所得増加につながる小売・外食。

逆に注意が必要なセクター: 石油関連(INPEX、ENEOSなど)は利幅縮小の可能性。ただし、供給増期待の段階では精製マージンの動向次第で悪化幅は限定的になることも多い。


まとめ:これは「チャンス」か「ノイズ」か?

今回の交渉進展は間違いなく「方向性のある動き」だ。しかし最終合意には複数の難関が待ち構えており、今の時点で「地政学リスクは消えた」と判断するのは早計だろう。

投資の観点から言えば、

  • 短期的な原油の下押しは継続的に意識しながら、エネルギーコスト恩恵セクターへの関心を高めるタイミング。
  • 交渉が再び「決裂」に傾いた場合のヘッジとして、原油・防衛・金の一部を保有しておくことも選択肢。
  • 次の注目日程は約2週間後(3月上旬)の第3ラウンド。この結果を確認してから本格的に動くのが無難な判断かもしれない。

地政学リスクは「消えない」が「薄れる」。その微妙な変化を先読みすることが、2026年前半の投資判断において重要なカギになりそうだ。


※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資はご自身の判断と責任のもとで行ってください。

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…は売りが先行している。  一方、米国とイランは17日、スイスのジュネーブで、イランの核開発問題を巡る高官協議を開いた。ウラン濃縮活動停止を強く訴える米…
(出典:時事通信)

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<ツイッターの反応>

妖怪目玉
@youkaimedama

トランプ米大統領が長年にわたってディール(取引)に執着してきたことは有名だ。それでもトランプ氏が起用したお気に入りの特使に、スイス・ジュネーブでたった1日のうちにイランの核開発問題とウクライナ和平という2つの重大な交渉を掛け持ちさせ ソース: Reuters Japan search.app/4dJVfJkenbR3Yc…

(出典 @youkaimedama)

増田隆信
@6WbLt72TVB65218

mas.n.'26.2.12(木)世界のtopnews 6.米国トランプ大統領イスラエルとイランの核開発問題についてイスラエルネタニヤフ首相との会談。 7.米国軍事作戦したベネゼエラ寄りのキユーバに石油輸出する諸外国に新たに関税課す構え。misiob増田隆信

(出典 @6WbLt72TVB65218)

ʙʟᴜᴇʜᴏᴜʀ ᴍᴀʀᴋᴇᴛꜱ
@bluehourmarkets

地政学リスクとは政治や軍事の緊張が経済に与える悪影響のこと 中東情勢の悪化は原油価格の急騰や金融市場の不安定化を招く イランの核開発問題は長年にわたり国際社会の懸念材料となっている 核協議の進展は制裁解除や石油輸出再開への道筋となる

(出典 @bluehourmarkets)

Real Zion
@TheRealzi0n

返信先:@nhk_news イランの核開発問題や地域での影響力拡大を背景に、両国の連携強化が焦点。 会談内容は今後の中東情勢に影響を与える可能性がある。

(出典 @TheRealzi0n)

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