
ストップ高で「青空圏」へ突入——
リガクHDが体現する、日本版「AI×半導体」国策投資の全構造
2026年2月19日朝、リガク・ホールディングス(268A)がマド開けでストップ高まで急騰し、上場来高値を更新した。表面的には「キオクシア関連」としての思惑買いに見えるが、その奥には日本の産業政策が大きく動き始めたという構造的変化が潜んでいる。なぜリガクHDが「今日」急騰したのか——投資家が知るべきすべてを、最も深い視点から掘り下げる。
なぜ「リガクHD」が動いたのか——3つのトリガー
今日のリガクHD急騰は、複数の材料が同時に重なった結果だ。単一の「ニュース」ではなく、複数のテーマが同時に収束したことで、市場の資金が一点集中した。
キオクシアHD(285A)が年初から記録的な大商いで株価水準を急速に切り上げている。そのキオクシアのNANDメモリー量産ラインに、リガクHDの次世代半導体用計測装置の導入が決定済みであることが市場で改めて認識された。「キオクシアが伸びるなら、リガクHDにも直接的な受注増が来る」という明確な連鎖ロジックだ。
昨日(2月18日)に発足した第2次高市内閣。AI・半導体を17の重点投資分野の最上位に位置づける成長戦略は、現在まさにロードマップ策定の佳境にある(2月〜5月にかけて分野別ロードマップを公表予定)。「成長戦略本部が実際に動き出す2026年」に向け、政策の恩恵を受ける企業への先回り買いが加速している。
トランプ関税の引き下げ条件となった総額5,500億ドルの対米投資。第1弾の具体化(3月の日米首脳会談が焦点)に続き、第2弾・第3弾案件の中に半導体関連企業が登場するとの思惑が市場関係者の間で広がっている。精密計測装置のグローバルリーダーとしてのリガクHDがその候補に挙がっているという観測も、中堅証券ストラテジストから指摘されている。
リガクHDとは何者か——X線で半導体を「見る」世界的権威
「リガクHD」という社名を初めて聞く投資家も多いかもしれない。しかし、この企業は日本の精密機器産業の中でも、特異な地位を占める世界的技術企業だ。
創業70年超——「X線で物質を見る」技術の総合企業
1951年創業のリガク・ホールディングスは、X線を利用した分析・計測機器の開発・製造を70年以上にわたって続けてきた理科学機器の専門企業だ。現在は90ヵ国超でビジネスを展開し、旗下の子会社17社とともに「グローバル・ワン・リガク」体制を敷く。
(アカデミア・研究開発)
コントロール機器
(今回の主役)
(アフターサポート)
「計測」vs「検査」——リガクの高付加価値ポジション
半導体製造における品質管理には大きく2種類ある。個々のチップの欠陥を見つける「検査(Inspection)」と、製造プロセスそのものの品質を測る「計測(Metrology)」だ。リガクHDが手がけるのは後者の「計測機器」であり、プロセスの歩留まり改善に直接貢献する高付加価値セグメントだ。蛍光X線(XRF)、X線反射率(XRR)、X線回折(XRD)など複数のX線分析手法を組み合わせ、半導体ウェーハの薄膜評価・膜厚・組成・結晶性を計測する。
リガクHDは半導体X線計測機器のグローバル市場においてシェア30%を有する世界第1位のリーダー。この市場規模は2023年時点で470百万ドル(約730億円)から2026年には607百万ドル(約940億円)へ年平均8.9%成長が予測されており、AI・半導体需要の拡大に連動した高成長市場のど真ん中に位置する。
キオクシアとの「深い絆」——NANDメモリーを測定する装置
今回リガクHDが「キオクシア関連の最右翼」と評される理由を、構造的に理解しておきたい。
世界初のNAND型フラッシュメモリを発明した東芝のDNAを受け継ぐ専業企業。世界シェア約17〜19%(第3位)。AIデータセンター向けSSD需要急拡大の直接受益者。
▶ AI向けSSD需要で年率27%成長を見込む(〜2029年)計測装置
導入決定
X線計測装置の世界トップ企業。キオクシアのNANDメモリー量産ラインに次世代半導体用計測装置の導入が確定。製造プロセスの品質管理を支える「縁の下の力持ち」。
▶ 半導体X線計測市場でグローバルシェア30%・世界1位キオクシアのNANDフラッシュメモリは「3次元積層」技術で急速に進化している。積層数が増えるほど、各層の膜厚・密度・組成を精密に測定・管理することが不可欠になり、リガクHDのようなX線計測装置なしに歩留まりの高い製造は不可能だ。キオクシアが「今後5年で記憶容量ベースの生産能力を2倍にする」計画を推進するなら、リガクHDの計測装置の需要も比例して拡大する——これが投資家が描くシナリオだ。
業績の「実態」——思惑だけではない成長の証明
テーマ株としての人気は、実態を伴ってこそ持続する。直近2026年2月13日に発表されたリガクHDの決算と来期ガイダンスを見てみよう。
| 指標 | 2025年12月期(実績) | 2026年12月期(会社予想) |
|---|---|---|
| 売上収益 | 941.93億円(前期比+3.9%) | ▲ +7.2% 見込み |
| 営業利益 | 167.09億円(同▼9.0%) | ▲ +16.1% 見込み |
| 営業利益減の背景 | 将来への成長投資を継続したことによる先行費用の発生。「投資フェーズ」としてポジティブに解釈可能。 | |
| 3年平均成長率 | 売上高 +14.53%/年、純利益 +132.17%/年(2022→2025) | |
| AI半導体向け採用 | 北米およびアジア(中国除く)でAI半導体向けへの製品採用が加速。GAA世代ロジック、アドバンスト・パッケージング向けの新規需要を獲得。 | |
2025年12月期の営業利益が前期比でマイナスになっている点は一見ネガティブだが、その中身を見ると研究開発投資(68.38億円)と設備投資(63.62億円)の合計で約132億円と積極的な先行投資を行った結果だ。「今の利益を削って、来期以降の成長に投資した」という文脈であり、2026年12月期に16.1%の営業増益を自社予想する根拠となっている。
高市政権「17重点投資分野」——政策の旗手としてのリガクHD
今回のリガクHD急騰を「政策株として」正確に位置づけるには、高市政権の成長戦略の全体像を理解する必要がある。
「AI・半導体」分野への資金投入は過去最大規模
政府は2030年度までの7年間でAI・半導体支援に10兆円以上を投じ、これを呼び水に官民合わせて50兆円超の国内投資を目指す(2024年11月閣議決定)。2026年度本予算には半導体関連で毎年1兆円規模の予算確保が自民党「半導体戦略推進議員連盟」によって推進されており、予算の規模感と具体化スピードはいずれも過去最大だ。
この予算が実際に動くためには、半導体の「製造」だけでなく「計測・品質管理」のプロセス強化が不可欠だ。TSMCの熊本工場など国内製造拠点の拡大が進めば、それに伴って計測装置の需要も構造的に増加する。リガクHDはその「需要を受け取る立場」にある。
2026年2月〜5月、高市政権はAI・半導体分野の「ロードマップ案の策定と公表」を予定している。このタイミングで具体的な政策支援の内容(補助金・税制・規制緩和)が明示されれば、リガクHDを含む半導体製造装置・計測機器各社への直接的な恩恵が見込まれる。「まだ完全には織り込まれていない政策催促」という点で、現時点でも先行きを評価しやすいテーマとなっている。
投資家が見るべき「次の注目ポイント」
ストップ高をつけた今日以降、投資家がリガクHDをフォローする上で見ておくべきマイルストーンを整理する。
| 時期 | イベント | リガクHDへの含意 |
|---|---|---|
| 2026年3月 | 日米首脳会談(対米投資第1弾の合意期待) | 半導体関連企業の案件公表でリガクへの思惑が再燃する可能性 |
| 2026年2〜5月 | 高市政権「AI・半導体ロードマップ」公表 | 補助金・税制の具体的内容が明確化。直接受益の確認ポイント |
| 2026年上半期 | キオクシア新工場・最先端NANDの出荷開始 | 計測装置の稼働・追加発注が受注増となって業績に直結 |
| 2026年8月 | リガクHD第2四半期決算発表 | AI半導体向け受注が業績数値として現れるか確認 |
| 2026年秋 | 高市政権「経済対策」予算措置 | AI・半導体分野の追加予算が重点配分されるか注目 |
見落としてはいけないリスク要因
ストップ高という強烈なパフォーマンスのあとだからこそ、冷静にリスクを点検しておきたい。
- ストップ高翌日の利益確定売り:短期資金が一時的に流入した銘柄は、翌日以降に急速に反落するケースも多い。中期で評価する姿勢がなければ、エントリーのタイミングには注意が必要だ。
- シリコンサイクルのリスク:NANDメモリー市場は価格変動(シリコンサイクル)が激しく、需要が一巡した際には供給過剰・価格崩壊に陥りやすい。キオクシアの生産拡大が過剰供給につながった場合、リガクHDの受注にも影響が波及する。
- 政策実現の遅延・縮小:高市政権のロードマップがスケジュール通りに具体化するとは限らない。予算規模の縮小や政局変動が起きた場合、政策株としての評価は剥落しやすい。
- 競合技術の台頭:半導体計測装置市場ではKLA(米国)やHMI(ASML子会社)など強力な競合がいる。次世代デバイス向けで技術競争が激化した場合、シェアの防衛が課題となる可能性がある。
- 対米投融資の進捗リスク:第1弾プロジェクトの合意が2月12日の日米閣僚会談でも持ち越しとなった。3月の首脳会談での合意が遅れれば「思惑先行」が剥落し、関連株全体が調整する場面も考えられる。
- バリュエーションの引き上げ:上場来高値更新・青空圏入りということは、過去のPER・PBRとの比較が通用しない水準に突入している。利益成長が想定を下回った場合の下落リスクは、水準が高い分だけ大きくなる。
今日のストップ高を一言で言い表すなら、「思惑と実態が同時に収束した瞬間」だ。キオクシアとの実装確定という具体的な関係、半導体X線計測で世界30%シェアという確固たる技術基盤、高市政権が10兆円規模の予算を投じるAI・半導体政策の直接受益ポジション——これらが2026年という「政策が動く年」に一斉に評価され始めた。
ただし、ストップ高で買い向かうことと、中長期テーマとして評価することは別物だ。まずは翌日以降の株価の落ち着きを確認し、ロードマップ公表(2〜5月)と決算(8月)という2つの確認ポイントを見極めた上でポジションを考えるのが理にかなっている。リガクHDが体現するのは、日本が「半導体製造の復権」を賭けて動き始めた時代の最初のページかもしれない。




















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