akippa(627A)は何で稼ぐ会社か|駐車場代1,000円の内訳とBB締切9月9日
駐車場マーケットプレイス「アキッパ」を運営する株式会社akippa(証券コード627A)が、2026年9月18日に東証スタンダード市場へ上場します。ブックビルディングの受付は2026年9月9日まで。空いている駐車スペースを貸したい人と、停めたい人をつなぐサービスです。この記事では、この会社がどうやってお金を受け取っているのかを、手数料の流れから順に見ていきます。
まず全体像:akippaはどんな会社か
アキッパは、月極駐車場の空き区画や個人宅の車庫、空き地などを、スマホから予約して使えるようにしたサービスです。2025年12月末時点で累計会員数は500万人を超え、掲載されている駐車場は55,020台。駐車場そのものは自社で持っていません。土地を借りて機械を設置するコインパーキング事業とは、そもそも仕組みが違います。
| 会社名 | 株式会社akippa(アキッパ) |
|---|---|
| 証券コード | 627A |
| 上場市場 | 東証スタンダード(情報・通信業) |
| 代表者 | 金谷元気(1984年生まれ) |
| 上場日 | 2026年9月18日 |
| 主幹事証券 | SBI証券 |
| 仮条件 | 540円 〜 570円 |
| 最低投資金額 | 57,000円(100株×上限価格) |
| 想定時価総額 | 35.7億円(上限価格ベース) |
最低投資金額が57,000円というのは、IPOのなかではかなり手が届きやすい水準です。株価の水準が低いぶん当選口数も多く、公開株数2,542,700株は100株単位で25,427口にあたります。
【図2の前に】お金はどう流れているのか
駐車場を持たずに、駐車場代から手数料を取る
アキッパの収益は、利用者が支払った駐車場代の一部を受け取る形です。この「受け取る割合」をテイクレートと呼びます。届出書によれば原則53.7%。マーケットプレイスとしてはかなり高い水準です。
図のとおり、利用料1,000円のうち537円がakippaの売上、残る463円が駐車場オーナーの取り分になります。オーナーからすれば、遊ばせていた土地から収入が生まれるので、この配分でも成り立つわけです。
ただし、akippaが受け取った537円がそのまま儲けになるわけではありません。ここから決済手数料、提携先への報酬、そしてエンジニアの人件費や開発の外注費が引かれます。2025年12月期の営業利益率で計算すると、最終的に営業利益として残るのは約28円。利用料1,000円に対して3円弱です。
この「取扱高」を推計すると年間で約71.3億円になります。そのうち約33.0億円がオーナーへ支払われ、売上として計上されるのが38.3億円という関係です。掲載駐車場1台あたりに直すと、年間の売上は約7.0万円。1台ずつはとても小さく、台数を積み上げて成り立つビジネスだと分かります。
楽天もソフトバンクも撤退した市場で残った
この分野には過去に大手が参入しましたが、いずれも撤退しています。駐車場のオーナー一軒一軒に営業して掲載してもらう作業は地道で、システムを作れば済む話ではありません。営業の手間の多さが、そのまま参入障壁になっているタイプの事業です。掲載が増えれば利用者が集まり、利用者が増えればオーナーも集まる。いわゆるネットワーク効果も働きます。
利用シーンは分散しています。届出書によると、イベントやスポーツ観戦を目的とした利用が駐車場売上の約34%。Jリーグのクラブや各種イベントとの連携がこれにあたります。残りは通勤や日常の外出などです。
【図1】業績:売上は着実、利益は直近で跳ねた
売上高は2022年12月期の2,082百万円から2025年12月期の3,828百万円へ、3期で年平均22.5%のペースで伸びました。直近の2025年12月期は前期比20.0%増です。極端な急成長ではなく、着実な右肩上がりという形です。
目を引くのは下段の営業利益です。2024年12月期の30百万円から2025年12月期は201百万円へ、1年で559.7%の増加。会社予想では2026年12月期に340百万円まで伸びる見通しです。
なぜ利益だけが急に伸びたのか
答えは費用の構造にあります。akippaの販管費は人件費や開発費といった固定費の割合が高く、売上が増えてもそれに比例しては増えません。営業利益率は2024年12月期の0.96%から2025年12月期に5.3%へ、会社予想では7.9%まで上がる見込みです。
ただし水準そのものはまだ低いことは押さえておきたいところです。2025年12月期の経常利益率は5.3%。黒字転換した2023年12月期の1.9%からは着実に改善していますが、一般にプラットフォーム型と呼ばれる企業と比べれば控えめです。決済手数料やオーナーへの支払いが売上から先に出ていく構造だからです。
2026年12月期の中間(1〜6月)は売上19.2億円、営業利益1.2億円でした。通期の会社予想に対する進捗率は売上で44.5%、営業利益では35.1%にとどまります。イベント需要が下期に厚いといった季節性が背景にあると見られますが、通期予想の達成には下期の伸びが要るということでもあります。
【図3】ここが最大の論点:売る人と持ち続ける人
IPOで市場に出てくる株には2種類あります。公募は会社が新しく発行する株で、集めたお金は会社に入ります。売出は既存の株主が持っている株を手放すもので、お金は会社ではなくその株主に入ります。
akippaの場合、公募が378,000株に対して売出が1,833,100株。割合にすると公募17.1%、売出82.9%です。公募でakippaに入る資金は差引手取概算で約169百万円にとどまり、エンジニアの人件費や外部人材への委託費に充てるとされています。
これをどう受け止めるかは、投資家の立場によって変わります。売出が多いということは、既存株主にとっては現金化の機会です。会社の成長のために資金を集める上場というより、株主が持ち分を売る場としての性格が強い構図になっています。
株主が事業会社とVCで固められている
株主構成を見ると理由が見えてきます。筆頭株主はSOMPOホールディングスで29.12%。2019年に出資し、保険代理店網を使った駐車場開拓が会員数の拡大を支えたとされています。第2位が金谷元気社長で16.91%、第3位がディー・エヌ・エーで14.47%。以下、住友商事4.87%、グロービス5号ファンド4.27%と続きます。
株主数は37名で、そのうち法人が75.4%を保有。出資してきた事業会社とベンチャーキャピタルが、上場を機に一部を回収するという、スタートアップのIPOとしては典型的な形です。創業者が売り抜けているという話ではありませんが、売り手側に回っている株主が多いのは事実として受け止めておくべきでしょう。
なお、公開株数のうち最大368,000株(約14.5%)は、日本駐車場開発への親引けが予定されています。親引けとは、あらかじめ決まった相手に割り当てることです。その分は市場に出回らないため、需給面では上値を支える方向に働きます。
【図4】ロックアップは3層構造になっている
ロックアップとは、大株主が一定期間は株を売らないという約束です。これがないと上場直後に大量の売りが出て株価が崩れかねません。akippaのロックアップは3つの層に分かれていて、ここが需給を読むうえで重要になります。
- 360日(2027年9月12日まで)……SOMPOホールディングス、金谷元気氏。最も長く固定されます
- 180日・解除条項なし(2027年3月16日まで)……ディー・エヌ・エー、住友商事、日本駐車場開発
- 180日・解除条項あり(同)……グロービス5号ファンド、JR東日本スタートアップなどのVC。公開価格の1.5倍を超えると期間内でも解除されます
3つめが曲者です。仮条件の上限570円で公開価格が決まった場合、解除の水準は855円。株価がここを超えると、VCが売れる状態になるということです。株価が上がれば安心、と単純には言えません。上がったからこそ供給が増えうる、という関係がここにあります。
値段は高いのか安いのか
仮条件の上限570円で計算した指標を並べます。いずれも上場時発行済株式数6,262,140株ベースです。
| 想定時価総額 | 35.7億円 |
|---|---|
| PER(2025年12月期の実績) | 16.0倍(1株あたり利益35.65円) |
| PBR | 5.1倍(1株あたり純資産110.8円) |
| PSR(時価総額÷売上高) | 0.93倍 |
| 時価総額÷会社予想営業利益 | 10.5倍 |
| 配当 | 現時点で予定なし |
実績PERの16.0倍という数字だけを見ると、IPO銘柄としては高くありません。ただし2025年12月期は当期純利益223百万円が経常利益204百万円を上回っています。過去の赤字による税負担の軽さが効いた結果なので、この利益水準がそのまま続く前提で考えるのは危険です。
会社予想の営業利益で見ると時価総額の10.5倍。こちらのほうが事業の実力に近い見方ができます。会社予想が前提の数字なので、達成できるかどうかは別の問題である点は忘れないでください。
はじめての人へ:日程と申し込みの流れ
| 仮条件決定 | 2026年9月1日(540〜570円) |
|---|---|
| ブックビルディング期間 | 2026年9月3日 〜 2026年9月9日 |
| 公開価格決定 | 2026年9月10日 |
| 上場日 | 2026年9月18日 |
| 主幹事 | SBI証券 |
| その他の幹事 | SMBC日興証券、みずほ証券、岡三証券、東海東京証券、岩井コスモ証券、マネックス証券、むさし証券、楽天証券 |
IPOは上場日に市場で買うのではなく、その前に抽選へ申し込みます。ブックビルディング期間中に「この価格で何株ほしい」と申告し、当選すれば購入手続きに進む、という流れです。今回は受付が2026年9月9日まで。主幹事のSBI証券が最も多くの割当を持ちます。
仮条件は540〜570円で、上限は当初の想定価格540円を5.6%上回りました。仮条件が想定価格より上に設定されるのは、機関投資家などの需要が強めに見込まれたことを示す材料です。この点は、上限が想定価格どまりだったレイヤード(634A)とは対照的です。
2026年9月18日には、akippaのほかテクノクラフト(622A)、ベルテックス(623A)、かがやきホールディングス(624A)が同時に上場します。合計4社が同じ日に並ぶため、投資家の資金と関心が分散しやすくなります。短期の需給という意味では、単独上場より不利に働く要素です。
リスクの整理
- 売出中心の需給……公開株の82.9%が既存株主の売出
- ロックアップの解除条項……株価が公開価格の1.5倍(855円)を超えるとVC分の制限が外れる
- 利益率の水準……営業利益率は改善中だが5.3%。費用構造の改善が止まれば利益成長も止まる
- 下期偏重……中間時点の営業利益進捗は35.1%
- 同日上場……4社が同じ日に並び資金が分散する
- 利益の質……2025年12月期は税負担の軽さが純利益を押し上げている
まとめ
akippaは、駐車場を持たずに駐車場代から手数料を受け取る会社です。テイクレート53.7%は高い水準ですが、そこから決済手数料や人件費が引かれるため、利用料1,000円に対して営業利益として残るのは約28円。一件ずつの利益は薄く、台数と件数を積み上げて成り立つ事業です。売上が着実に伸び、固定費の効きで利益率が上がってきたのが直近の姿になります。
一方で、IPOとしての性格は事業の評価とは別に見る必要があります。公開株の82.9%が売出で、株主の大半が事業会社とベンチャーキャピタル。ロックアップに解除条項がついた層もあります。会社が資金を集めるための上場か、株主が持ち分を売るための上場かという視点で見ると、今回はどちらかといえば後者の色が濃いと言えます。
同じ9月のIPOでは、レイヤード(634A)の分析記事も公開しています。あちらは公募が7割で創業者が売り抜けない構図、こちらは売出が8割で株主が回収する構図。同じ「9月のスタンダード市場IPO」でも、需給の設計はここまで違います。読み比べると、公募と売出の違いが実感として分かるはずです。
同日上場のテクノクラフト(622A)とベルテックス(623A)についても、それぞれ分析記事があります。4社同日という状況をどう考えるかの材料にしてください。
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