
原油95ドル台とイエメン・ホルムズの「二正面」リスク ── フーシ派がアラムコ本社を攻撃、日本株への波及を3シナリオで整理【2026年10月】
この記事のポイント
- 結論:10/14のWTIは95.09ドル、ブレントは106.06ドル。ホルムズ(東)とイエメン(西)の二正面のリスクが原油を支えている。標準シナリオはブレント100〜110ドルの膠着。
- フーシ派が10/6〜12にサウジの空港を、10/13夜にはダーランのアラムコ本社を攻撃。生産・輸出への影響は確認されておらず、価格の反応は小幅だった。
- サウジの原油の出口はホルムズと紅海側(東西パイプライン)の2つ。紅海側の輸出設備が狙われると、ブレント110ドル超の拡大シナリオに近づく。
- ブレントとWTIの差は約11ドル。日本の輸入価格に近いのはブレント・ドバイ側。原油高は空運・化学・電力に逆風、石油開発・商社に追い風。
- WTI原油(10/14)95.09ドル+0.95ドル
- ブレント原油(10/14)106.06ドルWTIとの差は約11ドル
- アラムコ本社被弾10/13夜・小規模な火災
- ホルムズのタンカー被弾1日6件10/11・紛争開始後で最多
1何が起きている? ── 原油95ドル台と「二正面」
10月14日のニューヨーク市場で、WTI原油先物(11月限)は前日比0.95ドル高の1バレル95.09ドルで取引を終えました。国際的な指標のブレント原油(12月限)は106.06ドルです。日中はWTIが93.97〜96.06ドル、ブレントが105.21〜107.15ドルの間を上下する、不安定な値動きでした。
原油を押し上げているのは、中東の2つの火種です。東では、封鎖から半年以上続くホルムズ海峡の混乱で、タンカーへの攻撃が再び増えています。西では、イエメンの親イラン武装組織フーシ派とサウジアラビアの衝突が再燃し、13日夜にはサウジの国営石油会社アラムコの本社(東部ダーラン)が攻撃を受けました。
ここで押さえておきたいのは、サウジの原油の「出口」が両方の火種に面していることです。サウジは湾岸側の油田からホルムズ海峡を通して原油を出すほか、国土を横切る東西パイプラインで紅海側のヤンブーへ運ぶルートを持っています。ホルムズが細っているいま、この紅海側のルートは貴重な迂回路です。イエメンとの衝突は、その迂回路の近くでリスクが高まることを意味します。
2イエメン:フーシ派とサウジの衝突が再燃
フーシ派とサウジの衝突は、2022年に始まった停戦以来の大きなものになっています。主な動きは次のとおりです。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 10/6〜12 | フーシ派がサウジの3つの空港を弾道ミサイルや無人機で攻撃。少なくとも20人が死亡、370人以上が負傷 |
| 10/10 | リヤドのキング・ハーリド国際空港にミサイルが着弾し、12人が死亡、300人以上が負傷。空港は17日まで閉鎖 |
| 10/13 | サウジ主導の連合軍が、イエメンの首都サヌアの燃料施設や紅海の港ホデイダの積み出し桟橋などを攻撃。100以上の軍事目標を破壊したと発表 |
| 10/13夜 | ダーランのアラムコ本社の建物が被弾。サウジのエネルギー省は「小規模な火災で、死傷者なし」と発表。火災は鎮火 |
| 10/14〜 | トランプ米大統領が、米国がサウジの攻撃に「加わるかもしれない」と発言。フーシ派は米国が加われば報復すると警告 |
フーシ派は、サウジがサヌアを攻撃すれば「アラムコの施設とリヤドの空港に報復する」と事前に予告していました。今回はその予告どおりの攻撃です。
3ホルムズ:タンカーへの攻撃が続く
ホルムズ海峡では、正体不明の飛翔体によるタンカーや貨物船への攻撃が続いています。英国海軍の海事情報機関(UKMTO)によると、10月11日には1日で6件の攻撃があり、紛争が始まってから最も多い日になりました。13日にもオマーンのムサンダム半島の北で、タンカーとコンテナ船が1隻ずつ被弾しています。
| 項目 | 状況(10月中旬) |
|---|---|
| 攻撃 | 10/11に1日6件、10/13に2件。この2週間で20隻以上が被弾したとの報道も |
| 通航量 | 民間の追跡サイトでは、10月初めの通航は1日数隻。危機前(1日約85隻)を大きく下回る |
| イランの姿勢 | 革命防衛隊の海軍は、米軍に協力する商船に「断固とした対応」をとると警告 |
| 米国の対応 | 1,900万バレルを超える原油の海峡通過を支援したと発表 |
| 需給 | 米エネルギー情報局(EIA)は運賃・保険料の上昇を指摘する一方、目に見える供給の減少はまだないとしている |
封鎖から半年以上がたち、海峡は「完全に止まってはいないが、通るのは高くて危ない」状態が続いています(これまでの経緯はホルムズ海峡「再封鎖」の時系列、封鎖から半年の記事)。国際エネルギー機関(IEA)も14日、市場の供給の制約に警鐘を鳴らしました。
4なぜWTIは95ドル、ブレントは106ドル?
今回のテーマの「原油95ドル台」は米国産のWTIの値段です。ニュースによってはブレントの「106ドル」が出てくるので、2つの違いを整理しておきます。
ふだんはブレントとWTIの差は数ドル程度ですが、いまは約11ドルに開いています。中東から原油が出にくくなると、中東の原油を買っていたアジアや欧州の買い手が代わりを探すため、国際価格のブレントが強く上がります。一方、米国内で取引されるWTIは、米国の増産や戦略石油備蓄の放出の影響も受けるため、上がり方が小さくなりやすいのです。
米国でも影響は出ています。14日に発表された米国の9月の消費者物価指数(CPI)では、ガソリンが前月比+9.1%と上昇分の半分以上を占め、FRBの10月利上げ観測が再び高まりました(米CPI3.7%と10月FOMCの記事)。原油高は、物価と金利を通じて世界の株式市場にも届いています。
5今後の3シナリオ
今後の原油価格を、イエメンとホルムズの2つの火種がどう動くかで3つに分けます。価格の水準は、14日時点で市場関係者が示した強気・弱気の見方と、モルガン・スタンレーの10〜12月期のブレント予想(105ドル)を目安にしています。
| シナリオ | 前提 | ブレントの目安 | 日本株への影響 |
|---|---|---|---|
| 沈静化 | サウジとフーシ派が停戦に向かい、ホルムズの攻撃も減る | 90ドル台後半(約97ドル) | 空運・化学など原油高に弱い業種が戻る。資源株は利益確定の売り |
| 膠着(標準) | アラムコの生産・輸出は無事。ホルムズは「細いまま」 | 100〜110ドル(約105ドル) | 今の構図が続く。決算では原油高の影響の差が目立つ |
| 拡大 | 油田や紅海側の輸出設備が攻撃される、または米国が参戦 | 110ドル超(114ドル前後〜) | 指数全体にリスクオフ。インフレ再燃で日米の利上げ観測も強まる |
筆者は「膠着」を標準と考えます。アラムコへの攻撃は本社の事務棟にとどまり、市場の反応も小幅でした。ただし、フーシ派の標的が紅海側の積み出し設備(迂回路の出口)に向かうと、ホルムズの代わりがなくなるため、値動きは一気に大きくなりえます。拡大シナリオのきっかけとして、最も注意したい点です。
6日本株・物価への波及
原油高が日本株に伝わる経路は、業種ごとに向きが分かれます。
| 業種 | 原油高の影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 石油開発(INPEXなど) | 追い風 | 販売価格が上がる。ただし中東に権益がある場合は操業リスクも |
| 総合商社 | やや追い風 | 資源の権益からの利益が増える |
| 防衛・エネルギー安全保障 | 追い風 | 中東の緊張で国策テーマとして注目されやすい |
| 空運(ANA・JALなど) | 逆風 | 燃料費が膨らむ。燃油サーチャージの反映には時間差 |
| 化学・素材 | 逆風 | 原料(ナフサ)高。値上げが追いつくまで利益が圧迫される |
| 電力・ガス・陸運 | 逆風 | 燃料費の上昇。料金への反映に時間がかかる |
物価への影響も見逃せません。原油高は、ガソリンや電気代を通じて日本の物価を押し上げます。10月には3,153品目の値上げがありました(10月の値上げと日銀の記事)。原油高が続けば、日銀が10月29〜30日の会合で物価の見通しを引き上げる材料になります。一方で、原油の輸入代金が増えることは円売りにつながり、円安がさらに輸入物価を押し上げる、という悪循環にも注意が必要です(原油高と企業業績の関係はブレント109ドルと日本企業の利益の記事)。
7これからのカレンダー
| 日付 | イベント | 見どころ |
|---|---|---|
| 10/15(木) | 米9月PPI・小売売上高(日本時間21:30) | ガソリン高が企業の仕入れ値や消費にどう出たか |
| 10/17(土) | リヤドの空港の再開予定日 | 予定どおり再開できるか。衝突の落ち着き具合の目安 |
| 随時 | サウジとフーシ派の攻撃の応酬・米国の関与 | 標的が油田・輸出設備に向かうかどうか |
| 随時 | UKMTOのホルムズ海峡の被弾報告 | 1日あたりの件数が増えるか減るか |
| 10/27〜28 | FOMC | 原油高によるインフレをFRBがどう見るか |
| 10/29〜30 | 日銀会合・展望レポート | 原油高を物価の見通しにどう織り込むか |
8まとめ
- ▸10/14のWTIは95.09ドル、ブレントは106.06ドル。中東の東(ホルムズ)と西(イエメン)の2つの火種が原油を支えている。
- ▸フーシ派がサウジの空港に続いてアラムコ本社を攻撃。生産・輸出への影響は確認されておらず、価格の反応は小幅だった。
- ▸サウジの原油の出口はホルムズと紅海の2つ。イエメンとの衝突は、ホルムズの「迂回路」の側にもリスクを広げた。
- ▸ブレントとWTIの差は約11ドル。日本の輸入価格に近いのはブレント・ドバイ側で、WTIの数字だけでは負担を低く見積もりやすい。
- ▸標準は「膠着(ブレント100〜110ドル)」。紅海側の輸出設備が狙われると、110ドル超の拡大シナリオに近づく。
出典と注意
CNBC・Newsquawk(原油先物の清算値と日中の値幅)、Bloomberg・CNN・Al Jazeera・The National・World Oil・時事通信・日本経済新聞(アラムコ本社への攻撃とサウジ・フーシ派の衝突)、Bloomberg・The Washington Times・ABC・CBS(サウジの空港への攻撃と米国の関与)、UKMTO・Maritime Executive・Safety4Sea(ホルムズ海峡の被弾報告)、民間の通航追跡サイト(通航量)、FinanceFeeds(強気・弱気の価格水準)、モルガン・スタンレー(ブレント予想、報道経由)、米労働統計局(米CPI)の各情報。通航量や被弾数は情報源によって差があり、目安として示しています。ブレントとWTIの差、3つのシナリオと業種別の影響は筆者の整理・見方です。記載内容は2026年10月15日時点の情報に基づきます。情勢は日々変わるため、最新の報道もあわせて確認してください。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。投資の判断はご自身で行ってください。
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本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

