
3メガバンク決算プレビュー|利上げ局面で何が問われるのか——5/13 SMFG・5/15 MUFG/みずほの注目ポイントを整理する
2026年3月期の本決算発表が、いよいよ今週、3メガバンクで連続して行われる。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG/8316)が5月13日(水)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG/8306)とみずほフィナンシャルグループ(みずほ/8411)が同15日(金)。3行とも第3四半期累計(26年3月期4〜12月)時点で過去最高益を更新中であり、本決算でも増益・増配のシナリオが基本線となっている。日銀は2025年12月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%へ引き上げ、30年ぶりの高水準に到達。銀行株は構造的な利上げ恩恵局面に入っているが、株価指標もすでにPBR1倍超まで戻している。本記事は、3行の本決算で何を確認すべきか、各行の戦略軸の違いはどこにあるか、そして27年3月期ガイダンスをどう読むかを、強気・弱気のいずれにも偏らずに整理する。
3Q累計の振り返り——3行とも過去最高益ペース
まず本決算の「事前情報」として、各行が直近で開示した第3四半期累計の数値を確認しておく。
SMFG(8316)は2026年1月30日発表の3Q累計(4〜12月)で連結経常利益が前年同期比17.3%増の1兆8,990億円、親会社株主に帰属する四半期純利益も同23%増。3行の中で最も高い増益率を示している。3Q累計では売上高・経常利益・最終利益のすべてで過去最高を更新した。
MUFG(8306)は2026年2月4日発表の3Q累計で経常収益10兆6,438億円(前年同期比3.6%増)、経常利益2兆5,092億円(同3.6%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1兆8,135億円(同3.7%増)。総資産は418兆円規模に拡大している。3Q単独(10〜12月)では経常利益が14.7%増と加速しており、4Qに向けたモメンタムは強い。
みずほFG(8411)は2026年2月2日発表の3Q累計で経常利益が前年同期比11.3%増、純利益が同19.2%増。総資産は5.0%増の297.6兆円となった。3行の中では「中庸」のポジションだが、増益率の絶対水準は依然として高い。
3行とも3Q時点で通期会社予想に対する進捗率は順調であり、本決算では多くの場合「上方修正+増配+自社株買い」のセットが期待されている。問題はその上方修正の幅と、来期予想(27年3月期ガイダンス)に何を織り込んでくるか、である。
利上げ局面の構造的恩恵——日銀0.75%の意味
銀行株を語るうえで避けて通れないのが、日銀の金融政策正常化プロセスである。簡単に整理しておく。
日銀は2024年3月にマイナス金利を解除して以降、2024年7月(0.25%)、2025年1月(0.50%)、2025年12月(0.75%)と段階的に利上げを実施してきた。2025年12月の利上げは1995年以来、約30年ぶりの高水準到達であり、植田総裁は会見で「現在の政策金利は中立金利の下限にまだもう少し距離がある」と追加利上げ余地を明示した。市場では2026年9月会合までに政策金利が中立金利の下限とされる1.0%へ到達するシナリオが広く織り込まれている。
この利上げサイクルが銀行収益に与える影響は、シンプルに言えば「貸出金利は上昇し、預金金利は遅行的にしか上昇しない」というメカニズムによる純利鞘(NIM)の拡大である。日本のメガバンクは普通預金・定期預金の付利を、政策金利の引き上げ幅に対して限定的にしか追随させていない。これは過去のデフレ局面で蓄積された「ゼロ金利下の預金行動」が、預金者側の金利感応度を低下させているためでもある。
この構造の中で、2025年12月の利上げ効果は26年3月期の通期決算には部分的にしか反映されていない。すなわち、本決算で確認すべきは「26年3月期に既に表れた利鞘改善の程度」と、それ以上に「27年3月期に向けた利鞘拡大の織り込み方」となる。
加えて重要なのが、長期金利の動向である。10年国債利回りは2025年12月の利上げ決定を受けて2%台に到達し、約26年ぶりの水準となった。長期金利の上昇は、銀行が保有する既存債券の評価損を拡大させる一方で、新規購入する債券の利回りを引き上げる。短期的には自己資本に対する評価損のインパクトが懸念材料となるが、中期的には債券運用利回りの底上げに寄与する。本決算ではこの両面のうち、各行がどちらをより強調するかにスタンスが現れる。
なお、企業向け貸出の与信費用については、足元では大きな悪化は見られていない。帝国データバンクの試算では、政策金利が0.75%から1.00%へさらに引き上げられた場合でも、追加で経常赤字に転落する企業の割合は3.3%程度に留まるとされる。コスト転嫁の進展により、企業の利上げ耐性は改善傾向にある。これは銀行側から見れば、貸倒引当金の積み増し圧力が限定的であることを意味する。
各行の戦略軸の違い——同じ利上げ恩恵でも中身は異なる
3メガバンクは「同じセクター」として一括りに語られがちだが、収益構造と成長戦略は明確に異なる。本決算で各行の決算説明会資料を読むうえで、この違いを念頭に置いておきたい。
MUFGは3行の中で最大の海外資産を持ち、米モルガン・スタンレーへの持分法適用、東南アジアの商業銀行群(タイのアユタヤ銀行、インドネシアのバンクダナモンなど)、米国MUFGユニオンバンク事業の再構築といった広範な海外プラットフォームが特徴である。直近では、インド大手ノンバンクのShriram Financeへの出資検討も発表しており、新興国戦略を強化する方向性が明確だ。海外比率の高さは、米国金利環境や円ドル相場の影響を受けやすいという両刃性を持つが、構造的には円高局面でも海外利益の絶対水準を確保しやすい。
SMFGはアジア戦略の進捗が注目軸となる。インドネシアのBTPN銀行統合、ベトナムのVPBank出資、米国SMBC日興証券の収益拡大など、過去数年で海外成長のドライバーを積み上げてきた。3Q累計の最高増益率(経常利益+17.3%)は、これら海外戦略のPMI(買収後統合)が収益貢献の段階に入りつつあることを示唆する。本決算ではアジア地域の利益貢献度合いと、米国・欧州市場部門の収益動向に注目したい。
みずほFGは2023年買収の米投資銀行グリーンヒル統合効果と、CB&S(コーポレート&インベストメントバンキング)部門の収益拡大が成長軸である。3Q累計でも役務取引等収益の伸長が業績を押し上げており、金利依存だけではない多角的な収益源の構築を進めている。一方、3行の中で最も国内リテール比率が高い構造でもあり、利上げによる国内預貸利鞘の拡大効果は最も直接的に表れやすい。本決算では「金利上昇恩恵 vs 投資銀行業務収益」のバランスがどう変化したかを確認したい。
3行が同時に好決算を出すとしても、その「好決算の中身」は異なる。投資判断の基準を、単純な増益率の比較ではなく、各行の戦略軸の進捗で評価することが重要である。
株主還元方針——配当性向40%、累進配当、自社株買いの三本柱
3行の株主還元方針は、過去5年で大きく進化した。基本的な枠組みは共通している。
配当については、3行とも配当性向40%を目安として、利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的・持続的な増加を基本方針としている。MUFGは2025年11月に26年3月期の年間配当を1株あたり74円(中間35円+期末39円)に修正し、5期連続増配となる予想を発表済み。SMFGは年間配当157円予想、こちらも5期連続増配。みずほも増配予定としている。
自己株式取得については、3行とも「業績・資本の状況、成長投資の機会、株価を含めた市場環境を考慮して機動的に実施」という方針を採っている。直近では、各行とも複数回にわたって自社株買いを実施しており、本決算と同時に新たな自社株買い枠が公表される可能性は高い。
注目したいのは、株主還元の総額(配当+自社株買い)が、純利益に対してどの水準に達するかである。配当性向40%ベースに加えて、機動的自社株買いを上乗せすることで、総還元性向は50〜60%の水準まで引き上げ可能となる。これは過去の銀行株の「配当性向30%台前半」時代と比べて、株主リターンの絶対量が大きく改善していることを意味する。
本決算では、各行が来期27年3月期の還元方針として、累進配当(減配しない方針)の継続性、株主資本配当率(DOE)への言及、政策保有株の売却計画と、それに紐づく株主還元への充当方針が示されるかどうかが焦点となる。
リスク要因——3つの逆風シナリオ
強気シナリオ一辺倒では分析として不十分である。本決算で警戒すべき逆風要因を3つ整理する。
第一に、海外貸出の与信費用増加リスク。米国経済は利下げ局面に入っているが、商業用不動産(CRE)市場の調整、消費者信用の悪化、テック企業の人員削減など、与信悪化の芽は複数存在する。MUFGの米国事業、SMFGの北米法人融資、みずほの北米CB&Sポートフォリオに、それぞれ与信費用増加が表れる可能性がある。
第二に、円高反転リスク。日米金利差の縮小、米国景気減速観測、中東情勢の沈静化に伴うリスクオン展開など、複数の要因が円高方向に作用しうる。3行とも海外子会社・投資先の利益を円換算する際、円高は円ベースの収益を目減りさせる。とくに海外資産比率の高いMUFGはこの影響を受けやすい。
第三に、保有債券の評価損拡大リスク。長期金利が10年で2%台に上昇したことで、過去に低金利環境下で取得した日本国債の評価損は拡大している。各行は債券ポートフォリオの入れ替えを進めているが、本決算で評価損の絶対額が市場予想を大きく上回ると、自己資本比率や次期還元方針への警戒感が高まる可能性がある。
これらは即座に株価を崩壊させる材料ではないが、決算説明会で経営陣がどの程度のトーンでリスク要因に言及するかは、市場の感応度を左右する。
投資家が見るべき5つのチェックポイント
本決算と同時に開示される情報のうち、特に注目すべきポイントを整理する。
- 27年3月期業績ガイダンス——会社予想として開示される27/3期の純利益見通しが、市場コンセンサスに対してどの程度上振れるか。日銀の追加利上げ(1.0%への到達)をどこまで織り込むかが鍵。
- 国内貸出金残高と預貸利鞘の推移——利上げ恩恵を受けるためには、貸出残高の維持・拡大が前提となる。3行の国内貸出金残高(前年比)と、預貸利鞘の四半期推移を比較したい。
- 海外子会社の与信費用——とくに米州・欧州の貸倒引当金の積み増し動向。市場予想を大きく上回る引当金計上があれば、来期業績への警戒材料となる。
- 政策保有株売却計画の進捗——東証のPBR1倍割れ要請以降、3行とも政策保有株の縮減ペースを加速させている。売却益の水準と、その還元への充当方針が来期の利益水準を左右する。
- 株主還元計画——27/3期の年間配当予想、自社株買い枠の発表規模、累進配当の明文化、DOE目標への言及。総還元性向50%超を打ち出してくるかが、株価反応を分ける可能性が高い。
結論:本決算で問われるのは「過去」より「未来」
3行とも3Q累計時点で過去最高益を更新中であり、本決算で増益着地となる蓋然性は極めて高い。しかし、株価はすでにPBR1倍超まで戻し、予想配当利回りも2%台後半〜3%台前半まで低下している。「最高益更新」という事実だけで株価を一段押し上げる地合いではない。
本決算で問われるのは「過去の業績」ではなく「未来のガイダンス」である。日銀の追加利上げをどこまで織り込んだ27/3期予想を出してくるか、株主還元計画にどこまで踏み込んでくるか、海外事業のリスク認識をどう示すか——この3点で、各行の経営陣の自信と慎重さの度合いが浮き彫りになる。利上げ局面の構造的恩恵は本物だが、それが既に株価に織り込まれている以上、本決算の「サプライズ係数」が今後の3行のパフォーマンスを決定づける。






















